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嵐の夜

お疲れ様です。

読んでくれてありがとうです。

 ジェフリーさんが、ずぶ濡れになりながら、馬車に対して挨拶をして扉を閉めた。

 だいぶ店の中も吹き込んできた雨で濡れている。最もこれくらいなら、軽く拭き掃除をすれば問題ないだろう。気が利くアマンダさんはモップを取りに、宿への扉に向かって行く。

「アマンダ、済まないが今日は帰れないだろうから、宿に泊まってくれ」

「言われなくても解ってますよ。特別手当よろしくお願いしますね。」

 アマンダさんは、扉を開けてからに振り向くと笑って言った。苦笑いであった。

「これじゃチップは期待できないですからね」

この時代のウェイトレスは基本的給与は安い。これだけでは、生活が出来ないのは当然のこと。其処で、お客からのチップが、収入の上乗せ分として、大きな比重を持っている。酒場の女には、それ以外にも秘密の収入があるけれど、子供であるあたしは知らない事になっている。其れがみんなの平和のために成る。

「あの、これ」

 あたしはうっかりしていた事に気付く。懐から銅銭一枚を取り出し、アマンダさんの手渡す。

「ありがと」

 彼女は良い笑顔を浮かべて、あたしが渡した銅銭を胸の秘密のポケットにしまい込む。

 銅銭一枚は少しばかり少ないかも知れないが、子供が渡すのにはかなり頑張っていると言えるだろう。たぶん、父ちゃんがそれなりに渡しているはずだから。

 ランプ亭としては、宿に泊まってくれている客はそれなりにいるので、もうけは確保済み。嵐とは言っても、それほど悪いことでは無いだろうし。雇われている人間にとっては困ったことであるけど、宿の経営者にとっては、それほど困らないのかも知れない。

 あたしは、なんだか味が解らない食事を終わらせ、二階の部屋に戻ると、父ちゃんが床にあぐらをかいて、弓の手入れをしていた。雨の濡れたままにしておくと、使い物にならなくなるから、すべての道具に点検をするつもりなのだろう。

 あたしも遣っておかなければいけないかな。

 仕方が無いので、濡れた荷物を取り出す。父ちゃんは、これをしろとは言わない。だまって、自分の遣ることを遣ってみせるだけ。

「村に帰りたいと思っているだろうが、今は行っても足手まといになるだけだ。迷惑にしか成らないのは解るな」

「みんなのことを心配してしまうよ」

「其れは判るが、今のおまえには何も出来ないだろう。村の衆に迷惑にしか成らない」

「解っているけど、辛いのよ」

 あたしだって其れは判っている。でも、村の衆は全員よく知っている人たちなのよ。たとえ其れが嫌いな人ですら、無事でいてほしい。

「おまえはまだ、ガキだ。考えはずっと大人だとしても、大人に任せていれば良い。それに、この嵐の中向かっていっても、何の役にも立たないだろう」

「・・・」

「お嬢様は思いの外使えるみたいだから、当座は任せておけば良い」

 父ちゃんは弓の手入れが終わったのか、弓をベッドの脇に立てかけた。そして、荷物の中から長剣と、油壺とぼろ布を取り出した。道具の手入れは続行するみたいである。

 

 

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