大人達の会話 3
「本当にリコ嬢は、奥様に良く似ておられる。マリア様をお助けしたときも、彼女が作戦立案をしたのだとか。襲撃場所の選定も、マリア様を傷つけないように細心の注意をしての、段取りなど見事と言うしか在りません。思えば捨てたりせずに、木賃と教育を施すことが出来たら。どれほど素晴らしい御嬢様に成られたことか」
リントンは、執事らしい笑顔を浮かべて言った。昔を懐かしむ時の、彼の顔だった。
「言っておきますが、あのこはハーケン殿の宝物なのですから、下手なことに巻き込もう物なら、貴方ですらただでは済まないですわよ」
クスクス笑いながら、ドリーが言った。
「半年前の事件に関しては、緊急避難なので。ハーケンも納得してくれた物の。本音はあまり嬉しくは無かったみたいですからね」
「そうね。私も出来れば、あまり危ない真似をさせたくは無いわ」
「では奥様、メイド件護衛は辞めさせますか」
「ここで其れをしている分には、それほど危険も無いでしょうから。他のメイド達を、納得させるためにも辞めさせるわけには行かないわね」
実際ナーラダのリコに払っている給金の額は、並のメイドの其れでは無い。侍女に払われている金額と同じなのである。因みに、特異小隊の隊長をしているハーケンよりは少し劣る。其処には、御屋敷を取り仕切っている、誰とは言わないが執事の忖度である。
なんだかんだ言っても、アリス・ド・デニム伯爵夫人の失われた娘に対する愛情が、要所要所に鏤められている、労働環境には違いなかったのである。
その言い訳として、身代わりとなることで護衛をするから、普通より良い待遇で雇っているとしていたのである。ぶっちゃけ、領地に居る限りそうそう危険は考えられない。半年前のマリア誘拐事件が、あり得ないことだったのである。
ナーラダのリコは普段からちゃんと、メイドの仕事を熟し。少し遊びが入っていると言っても、木賃と鍛錬をしていた。だから、他の先輩メイド達から文句が出たことは無い。
その上、緊急時の対応力と、胆力は定評がある。実際、彼女は他のメイド達から頼りにされていたりするのである。
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