デニムの娘(仮)8
奥様のサロンには、既に四人の女性が集まっていた。当然のことだけれど、奥様とマリア、それから侍女のドリーさんにメイド長のサンドラさんが、あたしを待っていた。
其れを一瞥すると、あたしは逃げ出したくなった。この陣容は、お小言では済まない感じがするのだ。そして、あたしの後ろには、逃がさないと言わんばかりのリントンさんが控えている。
本来なら、サンドラさんがあたしを招き入れるために、扉を開ける立場なのだろうけれど。何故かサンドラさんは、椅子に座り込んだまま、気分が悪そうにしている。
何か衝撃的なことを聞かされたのかも知れない。もしかして、あたしのことを知らなかった。
「奥様、サンドラは大丈夫でしょうか」
その様子を見た、リントンさんが尋ねる。
奥様は、貴族夫人らしい仕草で頷いて見せた。大丈夫だと言うことなのだろう。
「心配は要りませんわ。彼女は、この事を初めて知らされたので、少し混乱しているだけですから」
奥様が実に落着いた様子で言う。さすがはデニム家の頭だと思う。彼女がいるから、マルーン地方は木賃と納められている。旦那様は、デニム家の直系の者で無かったので、いわばデニム家を動かす権利を持っていない。飾りのような物だった。
その男が、どうにかしてデニム家の財産を簒奪しようとして、悪役令嬢マリア・ド・デニム伯爵令嬢を操っていたのである。其れが、さくらいろのきみに・・・の流れの一本だった。
「リコさん。貴方も驚いたでしょう。良い機会でもあるし。兎に角此れからのことを相談いたしましょう」
因みにあたしの席は、奥様の左隣に用意されていた。右隣はマリアが座っている。彼女の前には、何枚かのクッキーが皿に載せられている。あれって、とっておきの奴じゃ無いか。
女五人と男一人の話し合いが始まる。
もしかして、あたしのことを話す感じだろうか。それなら、事実上の保護者も読んでほしいものである。だって、あたしは未だ十三歳の子供だよ。
読んでくれてありがとう。




