デニムの娘(仮)5
「私は色々と心配しております。何故ウエルテス・ハーケンが、貴方を助けたのか。彼が私兵団での立場をなげうって、一介の猟師に成ったのか。何故御嬢様が攫われたときに、都合良く介入できたのか」
「其れについては、半年前に説明したはずだけど。其れでも、父ちゃんと私を雇い入れることにしたのでしょう」
何処か、ヘクター・リントンさんの言葉は尋問くさくなってくる。
「ええ、ええ。そうですとも、奥様は貴方を信じたがった。しかし、貴方が奥様の実子だと言うことを知っているとは聞いておりません。その様子ですと、貴方はハーケンから事情を聞いていたのでしょう」
成るほど、リントンさんはあたしが平気な顔をしているから気になったのか。だから、わざわざやって来たのだろう。彼の中では、意外でも無く、あたしは要注意人物だったらしい。
「私は、若い時からウエルテス・ハーケンのことをよく知っております。だから、彼の言うことはほぼ信じられる」
リントンさんは、あたしの心の中を覗くように瞳を見詰めてきた。その鋭利な感じは、あたしに恐怖を感じさせる。この人は何を思って、ここへ来たのだろう。あたしは心の中で、彼の瞳を覗き返す。此れが正しい対処の仕方かどうか解らない。
あたしの中に、負ける者かという気持ちがむくむく立ち上がってきた。こう見えても、前世を足せば、立派な大人なのだから。負けてなんか遣らない。
「貴方はかなり秘密を持っていらっしゃる。そうではありませんか」
うわー。この人鋭い。まあ、半年も見ていれば解るモンなのかな。さすがは、デニム伯爵家の影達の頭領。やっぱり怖い人だな。
「私は十三歳になったばかりの村娘です。そんなに大それた秘密なんか在りませんよ。ビックリして昨夜なんか、父ちゃんに問い詰めに行ってきたばかりなんですよ」
「確かに貴方は、昨夜ハーケンの処へ問い詰めに行っていたようですね。それでも、旦那様が秘密の暴露をしたときに、貴方は御自分が捨子だったことを知っていたように見受けられましたよ」
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