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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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戦場に向かう馬車

 三人での食事が終わる頃、まるで図っていたように、ランプ亭の前に馬車が止まる音がした。この大雨の中でも、間近で馬車とその御者のかけ声は聞こえる。かなりの大声を出してる。近所迷惑では無かろうか。

「さて、手早く仕事を終わらせましょうか。済まないが、マーク殿、扉を開けておいてくださいませ」

 ディンギルドのジェフリーさんは、何でも無い様子で、毛布が入れられている包みを持ち上げる。今、雨着を着けずに、外に出ればずぶ濡れになる。この土砂降り状態なら、雨具を着けてもあまり変わらないかな。

 マークさんが、店の扉を開けると、強風とともにとんでもない大粒の雨が吹き込んでくる。滝のようなと言う表現が、適切かも知れない。店の明かりで照らし出された先には、扉にデニム伯爵家の紋章が描かれている。伯爵夫人が、やって来たときに乗ってきた、二頭立ての馬車で間違いない。

 あたしの視力でも、細部までは解らなかったけれど、馬車を引いている馬はあのときより大きな物で、軍馬みたいである。普通の馬車馬では厳しいかも知れない。

 御者台には、体格の良い兵士が雨具を纏って、こちらを見ている。やはり雨具の下に、皮鎧を着ているのかも知れない。

 こちらを見てくるその視線は、まるで戦場に赴こうとしている男の顔をしている。

 あたしは、彼らが戦場に向かって行こうとしているんだろうなと思う。だから、ジェフリーさんは協力を惜しまないのだろう。

 手伝おうとするアマンダさんを制して、ジェフリーさんが荷物を馬車に持って行くと、タイミングを見計らって、馬車の扉が開く。扉を開いたのは、中にいた文官風の衣装を着た男だった。既に馬車の中は、かなりの数の荷物でいっぱいになっており。座る場所は既になさそうである。

「ご苦労様です。無事に任務を完遂してください」

 ジェフリーさんが叫ぶように言った。

「ありがとうございます。後で主人からお礼をさせていただきます」

 文官風の人が応える。

「ご無事で」

 そのやりとりを、あたしはぽけーっと聴きながら、マークさんがあたし達に再度敬礼をして、酒場を飛出していくのを、見送るしか出来なかった。

 あたしは、馬車が出発したのを見送ってから、乗せて貰って村に帰りたいと思ってしまう。子供を戦場には連れて行かないことも解っている

 

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