デニムの娘(仮)
いやあ失敗したなぁ。昨日着ていたメイド服を、着ていたことを忘れていた。昨日は、父ちゃんの小隊の連中と遊んでいたことを忘れて、別の服に着替えていなかったのである。その時に使った、ハンカチはだいぶ汚れてしまっていた。此れは流石に、御嬢様の涙を拭くのには、適当じゃ無いよね。
御嬢様のハンカチのような小物は、本当なら既に用意して持っていなければ行けなかったのだけれど。お茶を用意することにかまけて、忘れてしまっていたんだな。サンドラさんに知られたら、少しの間お小言確定かな。もしかして、あたしドジっ子メイドなのかも知れない。
春先とは言え、それほど暖かくは無かったので。あまり汗もかかないし、大丈夫かなと思ったんだよね。まあ、マリアそのような事言いつけるような子じゃ無いから、大丈夫だとは思う。大丈夫だよね。
御嬢様の寝室には二つの扉がある。その扉の一つは、あたしの部屋につながってるのだけれど。もう一つの扉は、マリア様のクローゼットになっている。そちらはあまり大きな部屋では無いけれど、いわゆるウォークインクローゼットになっている。
その一郭にある箪笥にある、引き出しの中に可愛らしい小物の類いが入れられてある。其処にハンカチが、十数枚も用意されている。その中から手の込んだ装飾の入ったハンカチを取り出し。ポケットに突っ込む。そのポケットには、鎖が入っていたことに気が付いた。此れは手放さない方が良いよね。黙っていれば解らないし。
実際こんな物使わない方が良いのだけれど。なんかの加減で、荒事に巻き込まれないとも限らないしね。なんか、デニム伯爵の従者の人が胡散臭いんだよね。
だいたい、マリアがどうして誘拐されたのかが未だに解らないので、デニムの奥様があたしなんかを雇う気になったのだろうし。もしかすると、あたしを手元に置いておきたいだけだったりして。それでも、この御屋敷の警備体制を、出し抜いて誘拐できたことが奇跡だと思う。
あの時は、あたしがゲームのイベントを知っていたから、先回りしてマリアを助けることが、出来たから良かったのだけれど。案外身内に、手引きした人間がいたんじゃなかろうかと思うのだ。
たとえば、旦那様の手の者とか。ゲームの方では、悪役マリア・ド・デニム伯爵令嬢を操っていた節があるしね。自分の子供を亡き者にしようとする者が居るなんて、あまり考えたくは無いけれど。あたしを父ちゃんに捨てさせた、先代の爺の例もあるしね。
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