マリア・ド・デニム伯爵令嬢の悩み 7
リコは、マリアの座っている前に、紅茶を入れたかカップを置いてくれる。かぐわしい紅茶の香りが、彼女の鼻腔をくすぐる。思わず微笑みが浮かんでくる。
リコはマリアの前に座って、自分の分の紅茶を入れている。少し不作法な格好だとは思うのだけれど、今は指摘しないことにする。そんなことより、御父様の言ったことについて、彼女と話さなければいけない。本当はどう思っているのか、木賃と聞いておかなければ行けない気がする。
「リコには本当のことを話して欲しいの。御父様が言ったことについて、どう思っているの」
マリアは単刀直入に尋ねた。彼女はこう尋ねるしか、言葉を思いつくことが出来なかった。
「御嬢様。此れからは休憩時間と思っても宜しいですか」
「ええ……」
「じゃ。約束してくれるかな。此れから話すことは秘密にしてくれるかな」
リコの態度が、初めて会った時のように変わった。つまり、彼女の言う村娘モードだ。
「其れは約束するわ。私の大事な家族のことですもの」
リコはにんまりと笑う。機嫌の良いときの彼女の笑い方だ。
「あんたはまだ、あたしとあんたが姉妹だって信じられないんだろう」
「信じられないわ。だって、貴方はハーケンの娘なのでしょう」
「違うね。あんたは信じたくないんだ。出もね……。あたしはその時の事情を知ってる。だから、旦那様の言ったことは本当のことだよ」
「貴方、どうしてそんなに平気で居られるの。御爺様に捨てさせられたのでしょう」
リコは、自分の前に置いた紅茶に口を付けた。そして、少し視線を下げる。そうすると顔に影が出来る。
「あんまり感じないね。だって、あたしには父ちゃんが居てくれるからね。父ちゃんはあたしを捨てるように命じられたんだ。でも、直ぐに戻って拾ってくれた。だから、あたしがここに居る。そうしてくれなかったら、餌になってただろうね」
「其れって辛すぎないの。貴方は御爺様や皆を恨んでいないの」
「別に……。あたしは意外かもしんないけど、結構幸せだったしね。どちらかというと、あんたのことを気の毒に思っているよ」
そう言うとリコは、マリアの瞳を見詰めてくる。彼女の心を射貫くような、強烈な視線だった。
「あんたはどう思っているんだい。良い機会だかあら、あんたも気持ちを下呂って見たら良いだろう」
しばらく姉妹の会話が続きます。




