マリア・ド・デニム伯爵令嬢の悩み 5
マリアの私室は、寝室と居間の二部屋が用意されている。そして、居間の壁から、使用人用の小さな部屋が用意されている。そちらの部屋が、ナーラダのリコの自室になっている。本当は、使用人が待機するための部屋なのだけれど、布団を持ち込み寝泊まりしているので、いつの間にかそう言うことになってしまったのである。
確か、あの使用人部屋はマリアの部屋と対になっている空き部屋に、つながっていた。もしもマリアに姉妹が出来たら、其処が姉妹のへやになるはずだった。ナーラダのリコの部屋は本当なら、子供を面倒見る役割の使用人が、待機する場所なのである。
この居間には、少しばかり大人っぽい作りのテーブルと、伽差な作りの椅子が四脚用意されており。作り付けの家具には簡単なお茶のセットなども用意されている。今の処、マリアのお友達をこの部屋に通したことは無かったので、使ったことがあるのはマリアとリコの二人だけだ。
実際マリアには、この部屋まで通すほどのお友達はいなかった。もしも呼ぶとしたら、御母様のサロンをと開けて貰ってのお茶会ぐらいだろう。
居間の窓が開け放たれて、春の気持ちの良い風が、どこからか花の香りがだだ寄ってきている。遠くから、私兵団の訓練の掛け声が聞こえてきていた。ちょうど訓練が始まったのだろう。
壁の一郭には、小さかったけれど暖炉が作られている。今は火が入って居ない。だから、直ぐにはお湯を持ってはこれないだろう。リコは、ポットにお湯をもらいに行かなければいけない。だから、マリアは少しだけマリアと話す時間を遅らせることが出来た。
マリアは、華奢な椅子の座り込み。深い溜息を付いた。
この自分の中の、嫌な感情をもてあまして居るのである。あんなに屈託無く笑うことが出来ない、自分が嫌で仕方が無かった。いつの間にか、リコのことを当てにしている。其れが当たり前になってしまっているのだ。
一寸変わったメイドとの繋がりを、姉妹の物にしなければいけないのか。本音を言えば認めたくなかった。がさつで、怒ると奇妙な言葉使いをする。変わった女の子と姉妹なんて、考えたくは無い。使用人としてならまだつきあえるかも知れないけれど、姉妹としてつきあうなんて出来ない気がするのだ。
「ほんとにどうしよう。リコのこと嫌いになれれば良かったのだけれど。命の恩人でもあるし、気持ちの良い子なのよね」
マリアは、両手で頭を抱え込んでしまう。それでも時が経てば、リコがポットを持ってやってくる。何とか話をしなければいけないのだ。
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