話に入れた
「マーク。此れはどうやって持って行くの?」
流石に大きな荷物が重かったのか、アマンダは其れをテーブルの上に置いて、立ったまま皿の上に置かれている、テーズを一欠片口にする。
「ああ、領主様がご自分の馬車を出してくれたから、準備が整い次第荷馬車でも向かうことになっている。災害は防げなかったけど、復興は迅速に進めるようにとのご命令だ」
マークが応える。
「流石ね」
アマンダはそう言いながら、自分用に用意され深さらにスープをとり分けると、おもむろにパンを浸して、パクリと食べる。この分だと、赤ワインのボトルに手を着けるのも時間の問題だろう。
「あの。村は大丈夫なんですか?」
あたしが、一番知りたいのは、付き合いのある人達の安否である。そして彼らの財産である小麦畑のことだ。旨く避難できたとしても、畑の小麦は収穫期に入ろうとしていた。収穫できないと生活が成り立たなくなる。
そうなったら、色々と悲惨なことが想像できる。冬を生き延びられないかも知れない。
「残念ながら、第一報が入ってきただけだから、なんとも言えないんだ。君は?
「あたしはナーラダのリコ。あの村の出身です」
「そうか・・・。其れは心配だろうな」
あたしは前世と違い、この世界の不便さを今回実感した。今はどんなに知りたいと思っても、馬車で一日半しか掛からない場所でも、其処で何が起こっているか知ることが出来ない。何かが起きたときには、既に手遅れになるのである。
其れと、あたしはデニム伯爵令嬢を、助けておいて良かったかなと思った。ゲームのオープニングシーンで、あたしが殺して入れ替わるとき、可笑しくなってしまった振りをして、旨く入れ替わったのだけれど、流石に彼女の母親が取り乱していたスチルがあった。
取り乱していた伯爵夫人に、冷静で迅速な判断が出来たか怪しい。もしかすると、この水害時に、判断が出来なかったのでは無かろうか。
村の住人の生死を決める重要な判断。其れが出来なかったら、悲劇の芽が芽吹くことになるのかも知れない。




