マリア・ド・デニム伯爵令嬢の悩み
久しぶりの家族そろっての朝食は、マリア・ド・デニム伯爵令嬢が思っていたほど楽しくなかった。其れも此れも、リコの問題があったからだ。
食堂から自分の部屋に戻ら無ければ行けないのだけれど。足取りはかなり重い。本音を言うと帰りたくない。どんな顔をして、リコに会ったら良いのか解らない。
初めて会ったときのリコは、本当にドッペルゲンガーだと思った。会ってしまったら、取り殺されると思っていたから、とても恐ろしかった。
だから、強気に出たのだけれど。それからの半年間で、彼女が味方だと思うようになっていた。その味方は、本当は訳ありの姉妹だって聞かされて、どんな顔をしてあったら良いのだろう。
此れまで、彼女のことを平民の使用人だと思っていたから、だいぶ酷いことも言ってしまっている。もしかすると、本当は嫌われて居るのかも知れない。予想思うと怖かった。
ナーラダのリコが、御母様の子供になったら。此れまでのような付き合いが出来ない。
マリアには、どうしたらリコと姉妹の付き合いが出来るのか、解らない。今更、姉妹なんて言われてもどうしたら良いのか解らなかった。
彼女の歩みは止まってしまう。廊下の壁に手を付いて身体を支える。此れまでの自分の行動が、気持ちを重くする。
確かに、ナーラダのリコは私にそっくりだった。だからマリアは彼女のことを、ドッペルゲンガーだと思った。
真逆リコが、私の妹だったなんて、思っても見なかったのだ。
マリアの中で、御父様が言っていたことは全部嘘だと思いたいのだけれど。其れを否定してしまえる理由を思いつけない。心の中はぐちゃぐちゃでどうして良いか解らない。
近頃街で流行っている不倫の歌が、結構大きく聞こえてくる。こんな処では聞くことのない歌だ。マリアは顔を上げると、其処には洗濯物のワゴンを押すメイドが向かってくる。
歌声が止まる。彼女はばつの悪そうな顔をしていたけれど。直ぐに笑顔を浮かべて、挨拶をしてくる。
「おはよう御座います。御嬢様」
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