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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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押しかけガーディアン 5

 家族の団らんの会場である、食堂の扉から廊下に出ると、左に曲がって暫く歩いた先に、マリアの部屋に続く扉がある。その扉の前で、洗濯物集配担当のメイドが待っていた。

 彼女は、あたしとほぼ同時に雇われたメイドさんである。領都の職人の娘で、自分で決めて領主様の屋敷に奉公にやってきた。強い女の子である。丸顔に少しばかり丸い体形を気にしている、お姉さんである。

 この人は基本的にいい人で、あたしに対して何かと面倒を見てくれていた。美人では無かったけれど、愛嬌のある可愛い人だ。

「おはよう御座います。ごめんなさい。一寸待っててね」

 あたしは慌てて、マリアの部屋の、扉の鍵を開ける。今日洗濯して欲しい物を、扉の前に置いて置かなければ行けなかったのだけれど。うっかり忘れてしまっていたのだ。

「ちゃんとしてよね。後でサンドラさんに報告しておくわよ」

 ニコニコ笑いながら、彼女が言ってくる。結構怖い笑顔である。後で、何か甘い物でも奢るしか無いかな。

「うん。御免」  

「扉に鍵掛けておくから行けないのよ。中に入れれば勝手に、洗濯物を見繕って、持って行くのに」

 あたしは文句を言いつのる彼女の話を聞き流して、扉の鍵を開けた。食事に行くのに、無意識に鍵を掛けてしまったのが悪いのだけれど。マリアの安全を考えると、鍵を開けておくことは出来ない。単なるメイドだったら、マリアのみの安全を其処まで、考えないで済むけれど。

 あたしの立場では、部屋を開けっ放しにしておくことは出来ない。ちゃんと、洗濯物をまとめて扉の前に出しておけば良いだけなのだけれど。今日は、うっかり忘れてしまった。

 あたしの場合は新人メイドの、ミスだけでは済まされない。もしかすると領主一家の一員かも知れないって言う噂が、既に流されているのだから。此れっていじめのターゲットになり得る事情かも知れない。あたしは黙って虐められてやる人では無いけれど。それでも面倒なことではある。

「気を付けないと行けないわよ。貴方は、もう一人の御嬢様かも知れないなんて、つまんない噂を流す人も居るのだから、少しでも、隙を見せると酷いことに成るからね。今日の処はクッキー1枚で勘弁してあげるわ」

 

 





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