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話に入れない

 小太りのおっさんが、宿につながっている扉を押し開いて入ってきた。この人がこの宿屋の主、ディンギルドのジェフリーさんである。ちなみに彼は、この領都生まれ領都育ち生粋の領都の住人である。このランプ亭は、デニム伯爵家が、この地を領都としたときから、ここで宿屋を遣っている。平民の中では、デニム伯爵家に対して忠誠を誓っていたりしている。

 ちなみに彼は、ゲームのストーリーに絡んでくる。あたしと父ちゃんに敵対してくる。ヒロインちゃんの協力者の一人になる。モブには違いないけどね。

 今のところ、ジェフリーさんは領主婦人のためなら、毛布の十枚や二十枚はなんとかしてしまうくらい領都に対して、愛着を持っているらしい。彼の後から、付いてきているモニカさんが油紙で梱包された巨大な荷物を持ってきた。たぶん毛布の束でしょ。きっちり梱包されているところを見ると、お客が使っている物をはぎ取ったわけでは無く。それくらいは在庫にしているように見受けられる。

「ありがとうございます。いつも助かっております」

 マークさんは、ジェフリーさんがやってくると、そのまま彼の方に向き直り。きびきびした態度で、敬礼を行う。村に来る私兵の其れより、ずっと綺麗に決まっている。だいぶ鍛えられて居るみたい。

「いえいえ。姫様のご意向なら、これくらいは当然のことです。私どもには、直接お力になることが出来ませんから」

 ジェフリーさんは、にこやかに笑って言った。左の頬に笑窪が出来ている。誰にも嫌われない笑顔。

 ちなみに彼の言っている姫様は、アリス・ド・デニム伯爵夫人のことをさしている。彼女は、元々この伯爵家の当主なのだ。先代の伯爵夫婦には、娘一人しか生まれなかった。其れで、遠縁の侯爵家から五男を婿に貰ったのである。

 それなりに優秀な人物で、人柄もそれほど悪くは無かったが、貴族らしい貴族であった。今は王都において、外交に携わっている官僚をしていた。彼は、領地経営には全く興味を持っていない。その証拠に、年間二十日しか領主の館に戻ってきたことが無かった。

「食料などは宜しいのですか?」

「食料に関しては、備蓄分でまかなえるとのことですので。自分の担当は、ジェフリー殿の保管されている毛布を持って行くことと理解しております」

 あたし、話に入っていけない。


 

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