此れからのこと 15
「君は自分の立場を良く理解しているのだね。其れを聞いて安心したよ」
と、デイモン・デニム伯爵が厳かに言った。その綺麗な顔のおかげで、威厳がまるで無いけど。
「一寸待って。貴方はそれでも私の子供には違いないのよ。だから、このまま使用人を続ける必要も無いのよ。だって、貴方は私の子供なのだから」
奥様が手を止めて、あたしを見詰めながら言った。その真剣な表情は、心から思っていることを言って居るのだろう。
あたしのことを思って言ってくれているのは解る。でもね、素直にこの二人のことを親だとは思えないんだよね。血はつながっているけれど、育ててくれた父ちゃんも母ちゃんも居るわけで、その人達のことを忘れて、貴族になりたいとは思えない。
それに、国諸友の破滅フラグがアップを初めるかも知れない。折角マリアを助けたのだから、このままで良いんじゃないかな。この立場は気に入っているしね。マリア・ド・デニム伯爵令嬢の補佐役は、以外に、居心地が良かった。
「今更私を養子には出来ないでしょう。実際あたしは忌み子な訳で。生きていたからと言って、引き取って子供とすることは出来ないでしょう」
「そうかも知れないけれど、貴方は私の子供だわ。本当なら、デニム家の直系の娘として、生きる権利があるのよ」
さっきから奥様の手が止まっている。おおむね食事は終わっているから、問題にもならないだろう。
後ろに立っている、侍女のドリーさんが気遣わしげに、奥様の顔を覗き込んでいる。彼女は、このことを最初から知っていたみたいである。奥様が、取り乱さないように気を遣っているように見える。なんかドリーさんすげー。
侍女って主の相談役らしい。だから貴族として、きちんと教育を受けているらしく。大変頼りになる人なのだ。確か何処かの男爵家の三女だっただろうか。
平民でのメイドとは、仕事の内容が違うのだ。どちらかというと、秘書さん的な事を遣っているのだろう。
「奥様」
ドリーさんが、身をかがめて奥様に話しかける。流石に、声は聞こえてこない。ただ、奥様は百面相をしているので、何となく奥様の意に反することを言っているのだろう。勇気があると思う。
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