此れからのこと 13
このフイル・バーグは、父ちゃんの所に行く時に、足音を立てないように実は付いて来た。こんなに遅くまで間者みたいなことをしなければならないなんて、大変だなと同情していたんだけれど。同情して損したなと思った。
あたしにつかず離れずの距離で、付いて来ていたから。たぶんここの旦那様の命令なんだろうなと思って、付いてこさせてあげたんだけど。何だかこいつに優しくしてあげる必要ない気がしてきた。
何だったら、不審者としてレイにぼこぼこにして貰った方が良かったかも知れない。夜目の利くあたしにとっては、あの距離は気付く。夜の暗い中なら、普通は気付けない。だから、不審者と言ってボコボコにしても文句を言えないだろう。
今度は許さないんだから。あたしだって、一応マリアの護衛も兼ねてるんだから。決して弱くない。暗い中で、動き回るのは得意なんだから。
「奥様にお願いがあります。私はあくまでも父ちゃんの娘です。でも、マリア様に対して、特別に親しくして貰っていると思っています。だから、来年、彼女が王都の学園に入学するときに、一緒に行ってお守りしたいと思っております」
あたしは思いきって言ってみた。たぶん一緒に行って、守ってあげないと、彼女は必ずドツボにはまる。あの学校は、貴族としてのあれやこれやを学ぶ場所らしいけれど。別の見方をすれば、国を安定化するための執政だ。通わせている子供は、将来を担う重要な人材と同時に、体の良い人質となる。その上、お隣の国では侵略を考えている人間がいる。
たぶん、かなりの人数の間者が入り込んできている。ここの奥様は、かなりやり手らしく、相手に取ってやりにくい存在だって事が解るし。もしかすると、悪役令嬢マリア・ド・デニム伯爵令嬢こそが唯一の弱点なのかも知れない。
だから、彼女を誘拐するようなことが起きたのかも知れなかった。実は、誘拐犯は金で雇われた奴らだった。
あれだけ間者を捕まえたのにも関わらず、決定的な証拠を掴めなかったらしい。掴めていたとしても、隣国は大国だから文句も言えなかったらしいけれど。だから、数年後に滅ぼされてしまう。
読んでくれてありがとう。
それと、誤字脱字の指摘ありがとう。大変助かります。




