此れからのこと 12
奥様があたしを捨てたくて捨てたとは、思っていないけれど。本人には如何することも出来無かったことは、解っている。でも、なんか許せないのよね。理不尽だと思うけれど、頭では解っているけれど、なんか気持ちが許せないのよね。
悪いのは爺様だ。そいつは死んじゃっているんで、文句も言えないけれど。あの世まで行って文句を言うわけにはいかないし。
貴族でも、迷信を信じてしまう事はあるのかも知れないから。仕方が無いと思うことなんか出来ない。だって、父ちゃんが仕事を放り投げる覚悟で、あたしを拾ってくれなかったら、今のあたしは居ないのだから。
確かに赤ん坊の瞳が、暗い中で獣のように光っていたら、だいぶ怖いかも知れないけれど。でも、母ちゃんも村の衆も気にしなかった。結構父ちゃんは気を遣ってくれていたみたいだけどね。
いわゆる煮た肉に焼き色を付けた物で、あたしの味覚には今一だったけれど。厨房に料理人が、結構時間を掛けた物で、労作である。昨夜食べたスープの方が旨かったとは言えない。残さないで食べなければ。
この調理法は王都風だから、仕方が無いのだろう。旦那様が、都に帰るまでこの食事が続くのかと思うと、嫌になるな。本当に帰って欲しい。
それでも、乙女ゲームさくらいろの君に・・・のシナリオを考えると、来年は王都に行くことになる。マリア・ド・デニム伯爵令嬢は、王都の学び舎で貴族としての、教育を受けるようになる。その場で、彼女は多くのイベントを熟すことになる。
何も考えないで、あちらに行けば破滅フラグに足を引っ張られる。そして、破滅ルートに迷い込むことになるだろう。此れは余計なお世話かも知れないけれど、横から見ていれば危ないことに気づけるだろう。だから、マリアについて行くメイドは、都合が良い。
今話しておけば、来年何かと便利かも知れない。どのみち彼女を守ってあげるつもりであるし。王都への切符を貰っておこうかな。
食事が終わって、フイル・バーグが皆にお茶を入れてくれる。
「ありがとう。本当はあたしがやらなければいけないのにね」
「飛んでも御座いません。未だにここには、都式の給仕を出来る者が居りませんので。まして、貴方様に其れを望むことは出来ません」
と、フイル・バーグが言った。
なんか、イヤーな感じ。あたしは伯爵のむ茶ぶりに振り回されて、気の毒に思っていたけれど。主従そろって嫌な奴だわ。
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