此れからのこと 11
「貴方はあの時の事情を知っているのかしら。ハーケンはあのことを話したのかしら」
と、奥様が尋ねてくる。本当なら、こんな話はしたくないのだけれど。何しろ、ここのは子供が居るのかだから。
あたしはそんなことを考えながら、新たに配膳された肉料理にナイフを入れた。朝から此れってすごくない。料理人達は、何時頃から仕事を遣っていたのだろう。なんか体格の良いオッちゃん達が気の毒になった。其れも仕事だから仕方が無いけれど。後で労いに行ってあげようかな。何時も世話になっている人だしね。
「解っておりますわ。昨夜、父ちゃんに教えていただきました」
「ねえ。どういう事なの。それに、貴方なんか気持ち悪いわよ。まるで何処かの御令嬢みたいだわ。其れと父ちゃんでは無く、御父様では無くて」
マリアがあたしの方を眺めて、小さい声で尋ねてくる。本人は内緒話の積リみたいだけれど。全く内緒話になっていない。君幼すぎないかい。
「申し訳ありません。なるべく丁寧な言葉遣いを心がけております。今の私にはこれが精一杯です」
正直食べてる朝食の味が解らない。たぶん旨いのだろうけれど。だいぶ辛くなってきた。なんか、圧迫面接って言う単語があたしの頭に浮かんでは消える。
「私と血がつながっている親が、お二人だと言う事は父ちゃんに伺いました。でも、私にとっての親は父ちゃんと母ちゃんです。だから、血がつながっているからと言って、いきなり親だとは思えないのです。だから、今まで道理の関係を続けたいと思います」
「……」
「君は大変賢いな。君の考えに賛成するとも。実際厳しいから、僕は引き取ることに反対していたからね。此れで、アリスも納得することが出来たかな」
実にいい笑顔で、デイモン・デニム伯爵が言った。何だか小物臭のする人だな。残念美男子。
やっぱりこの人の子供だなんて思いたくないな。色々裏設定を知ってるあたし的には、出来ればこの人の子供には成りたくない。だって、この男は下げ○確定だし。何だか地が出てきちまったな。
まあ口に出さなければ良いか。なんちゃって令嬢モードは疲れるなぁ。この圧迫面接終わんないかな。今まで通り雇用関係で十分だと思う。
そんなことを口に出すわけにはいかないけれど。死んでも良いって、森に捨ててくれたんだよ。今更親子関係に戻りたいって言われてもね。
事情は判るから、奥様のことは気の毒だと思うけど。捨てられた側としては、簡単に水に流すことは出来ないかな。
読んでくれてありがとう。




