此れからのこと 9
「君は随分マナーを学んでいるのだね。もしかして、伯爵家に貰われたいと思っているの」
デイモン・デニム伯爵が、あたしの手元を聴視しながら聞いてくる。その声には、何か皮肉な感じが混じっている。なんかやな感じ。
「何故そう思うのですか」
あたしは、真面に答えないだろうなと思いながら尋ねる。こいつはあたしの事を如何したいと考えているのだろうか。此方も知りたいとは思うよ。でも、周りに人が居るのに、本音は言わないだろう。
「今の君は村娘には見えないから。随分小さな頃から、教育を受けたように見えるのでね。文字も読めるし、かなり高度な計算も出来るようでは無いかね。村では村長の事務仕事を手伝っていたとか。其れを狙っていたのでは無いかと邪推してしまう。此方の考え過ぎなら、謝っておくよ」
伯爵はにっこり微笑みながら言ってくる。だけど、どことなく胡散臭い。
あたしの方に先入観があるから、そう見えるのかも知れないけれど。騙されてはいけないと、気持ちに中で引き締めて、俳優みたいに綺麗な顔を眺める。
「別にそんな事は考えたことも無いですよ」
此れは本当のことだ。だって、そんなことになったら寝た子を起こすかも知れない。折角マリアを助けて、破滅フラグを折ったのに。貴族になって、面倒なことに巻き込まれてくはない。
出来れば戦争を起こさないようにしたいけれど、取りあえずなんちゃってマリアが、戦争の引き金は引かないで済むように成ったのに、わざわざ悪役令嬢に成って、引き金を引きたくない。
デイモン・デニム伯爵は、そんなあたしの顔を見詰めてくる。やっぱり色々邪推しているんだろうな。
「結論から言うとね。君を養女にすることは出来ないだろうな。何故なら、君の瞳が闇の中で光るそうじゃ無いか。其れって、何処か汚れが混じっているのではないかな」
「貴方」
奥様が、団場様の方を見た。次の瞬間、旦那様の顔が引きつった。たぶん、テーブルの下で、旦那様の足を奥様の足が踏みつけたのだろう。
此れって、後が怖いパターンじゃ無かろうか。それでも、旦那様は断固たる決意で、これだけは言うという気概を見せた。
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