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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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此れからのこと 8

 マリアの前に給仕をしている、フイル・バーグの顔をまじまじ見詰めならが、あたしは昨夜の追っかけの事を思い出していた。そいつは、あたしが使用人用の扉を出たときから、後を付けてきていたのだ。

 暗かったし、普通の使用人なら気付くことも出来なかったろう。半年前に、あたしと一緒に仕事をした、黒服のおいちゃん達を思い出す。あの人達の同業者かも知れない。

 レイが側に居たし。その時のあたしはそんなに怖く感じなかった。お迎えに来てくれて良かったなと思っている。そのレイ君は彼に気付かなかったみたいだけれど。其れは仕方が無いと思う。

 あたしの目は特別製だ。その為に、あたしが捨てられたのかも知れないけれど。今更だしね。

 あたしの追っかけはこの人だ。何のためにそんな事をしているのか、あたしには解らない。今その事を口には出せないだろう。それに、聞いても真面に応えてはくれないだろう。後でじっくりと聞こうかなとは思う。

 あたしは気を付けながら、前に置かれた皿をフォークで、なるべく音を立てないように口に入れる。新鮮な春野菜の味が、使われているドレッシングとあいまって、とても美味しい。平民には口に出来ない代物だ。何しろドレッシングに使われているのは、高価な香辛料なのだから。

 普通なら朝から食べるような物では無い。使用人の食事は、残った食材を食えるように工夫した物で。まず香辛料なんか使われない。塩味が主流である。

 普段の食事では、こんなにお高い料理を出したりしない。実際奥様だって、こんな贅沢な食事を滅多にしないのだ。此れまであたしは、こんな贅沢な食事は初めてかも知れない。

 あたしの隣に座っているマリアが、カトラリー群を眺めて、少し戸惑っている。其れが解ったけれど、あたしの手元に視線が集まっているので、なんとも言えない気分になった。注視の中での食事は、あまり居心地が良くない。

 この人は何をしたいのだろう。少なくとも、あたしが伯爵家の養子になる事には、反対してくれると思う。あたしは汚れらしいしね。是非、力一杯反対して欲しい。





 

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