此れからのこと 6
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食堂までは何時もの通りだったのだけれど、それからは話が変わってきた。何故か、奥様に一緒に食事をするように言いつけられてしまった。
既に朝食の為の準備が為されている。用意されている皿も、マリア・ド・デニム伯爵令嬢の物と変りが無い。テーブルマナーは身に付いているから、それほど困りはしないけれど。いきなりは困ってしまう。だって平民なんだよ。
平民の食事は基本的にワイルドなのが当たり前で、基本的にカトラリーなんか使ったりしない。良くて、スプーンを使うぐらいである。
でもさ、今日のテーブルセットは普段より気合いが入っている。朝食から、皿の周りに何本ものカトラリーが、置かれているのを初めて見た。旦那様の意向なのかも知れない。
その旦那様は、何となく意地の悪そうな笑顔を私に向けている。映画俳優みたいに綺麗な顔しているのに、実に残念。中身は駄目人間だって知っているけれど。側に騙されそうになる。此れが本当に父親って如何なの。奥様も側に騙されたんだよね。
奥様と旦那様は、南側の窓を背にした席に並んで座っている。マリアの席は旦那様に正対する場所に用意されている。あたしの席は、マリアの隣に決められていた。奥様の真ん前である。
「あの……。私はメイドなのですが」
「そう言わずに、取りあえず朝食の用意はさせたから、逃げないで話をしよう」
旦那様がそんなことを言ってきた。その心にも無い言葉は、酷く気持ちが悪い。腹に一物有る奴のしゃべり方。まあ、男なら一物はあるのが当たり前だけれど。
本当は、あたしの事を自分の子供だなんて思っていないよね。なんか邪魔者が増えたって思っていそう。その手の悪意には敏感なんだ。
奥様は、なんか困ったような顔をしている。本当に困っているのだろうな。こんな状況で、話し合うことなんか出来ないだろう。
何のために、あたしを朝食に呼んだのだろう。
何故かメイド長のサンドラさんが、給仕を務める段取りになっていて。侍女のドリーさんが、何だか真剣な表情で、奥様の後ろに立っている。
全体的に、美味しく食事をする雰囲気じゃ無い。此れなら、使用人用の控え室で、固いパンをかき込んでいた方がましなような気がする。絶対イヤーな話に違いないのだ。
読んでくれてありがという。




