此れからのこと 5
メイドの朝は早い。マリアが寝ている内に起き出しては、彼女が気持ちよく一日を始められように心を砕く。其れが仕事だから、当然のように行う。
まああたしの担当は、マリアの身の回りに気を配るだけなので楽である。暖炉に火を入れる火は、担当のメイドが持ってきてくれる。あたしはその火種を受け取ると、マリアが起きないように気を付けながら、暖炉にを入れる。
春先とは言え、未だに肌寒いので暖炉に火を入れる事から始まる。この早起きは小さな時からの習慣なので、今のあたしにはそれほど難しくは無い。
前世の時は、こんな時間に起き出して、仕事をするなんて思いもよらない事だ。流石のあたしも、今日は起き出すのが辛かった。父ちゃんの処で長く話しすぎた。
あたしが此れで事情を知っている辻間が合う。恐らく、奥様か旦那様から話があるだろう。その時に、面倒な説明を為なくて済む。
「おはよう」
マリアも、昨夜は眠れなかったのか、目の下に隈ができている。ショックを受けるのは当然だよね。今まで知らされなかったのだから、まして子供だし。敏感な年頃だし、ぐれないと良いけど。
「おはよう御座います。御嬢様、昨夜は眠れなかったのですか」
あたしは起き出してきた、マリアの着替えを手伝う。彼女は一日のうち三回は着替えている。取りあえず寝間着から、部屋着に着替えさせる。朝食は、何時もの食堂で家族そろって、食べる予定になっている。やはり滅多にそろわない家族だから、少しでも多く一緒に居たいと彼女が考えたからである。
あたしとしては、内心微妙無き分ではあるのだけれども。今の処メイドの立場では、雇い主の言うことは聞いてやらなければいけない。なんと言ったって、相手は御貴族様なのだから。
「ねえ。私は貴方のことを何と呼んだら良いのかしら」
「今まで道理で宜しいと思いますわ。私はあくまでもナーラダのリコの積リでおりますので。関係を変えたり致しませんわ」
昨夜より準備しておいた、普段使いのワンピースに、着替えさせながら言った。
「良いの」
マリアが不安そうに聞いてくる。関係が変わってしまうことに不安を感じているのだろう。
「今更、伯爵令嬢に成れって言われても、困ってしまいます」
そうだよね、姉妹だなんて言われても困るよね。あたしだって困る。もしかすると破滅フラグが復活するかも知れない。そういうのは嫌なのだ。
読んでくくれてありがとう。




