此れからのこと 4
ノックをしてきたのは、ジャックだった。あたしが食べた食器を下げに来たのだろう。速く下げて寝たいのかも知れない。当番兵の辛いと頃よね。
あたしが応えると、扉を押し開く。何時ものヤンキー顔には、愛想笑いが浮かんでいる。奴の後ろには、金髪碧眼のレイが立っている。気が付けば天辺に近い時間だ。
明日も早いので、帰ってくれって事かも知れない。勝手に片付けて帰るのにな。こう見えても、あたしはメイドさんなんだぞ。炊事当番の仕事と言われてしまうと何も言えないのだけれどね。
因みに父ちゃんも、平等に炊事当番が回ってくるらしい。其れなりに食える物を作っているらしいけれど。必ず料理上手な兵士と組んでいるそうだ。食中毒を出した事は無かったので、味はともかく食えなくは無いのだろう。
「食器を卸に伺いました」
と、ジャックが言った。仕草が兵隊っぽい。
後ろに立っているレイが、苦笑を浮かべていた。真逆ここにずっと立って待って無いよね。昔の話を為ている最中は、扉の向こうには人の気配は無かったから。心配は要らないだろうけれど。あの話が広がってしまうのは色々と不都合だと思う。
もっとも、伯爵様が皆の前で、だいぶぶっちゃけていたから、今更かも知れないけれど。余計な噂を立てないに越したことは無い。あれは確信犯かも知れないけれど。
明日はきっと忙しくなるはずだから、早く帰って寝てしまおう。メイドとしての仕事の他に、奥様と旦那様と話さなければいけないだろう。
なんとしても、メイド件護衛でパートタイム令嬢の立場を死守する。どうせ真面な方法で、あたしを貴族の席にねじ込む事は出来ないんだから。
奥様といえど、無理遣りあたしを養子には出来ないだろう。何しろ、父ちゃんは、簡単に承諾するわけが無い。あの様子なら大丈夫だ。
「ご苦労様。遅くまで御免ね」
空になった食器を、ジャックに渡す。
「ま。御嬢のためだから」
あたしが渡した食器を受け取りながら、良い笑顔を浮かべている。こいつはヤンキー顔で損していると思う。そんなに悪い奴では無いのに、悪者に見えてしまうのだ。ただ、良い奴ではあるけれど、彼氏には向かないかな。
残念なことに、直ぐ後ろにキラキラ顔があるせいで、見劣りしてしまう。其れは仕方が無いこと。見た目は大事よ。
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