此れからのこと
「御前は如何したい」
父ちゃんが辛そうに聞いてくる。
今更そんなこと聞かれても困る。あたしにだって、此ればかりは即答できるような事じゃない。
だって、御前は貴族の御令嬢だって言われても、気軽に答えることなんか出来ない。この人は十三歳の子供に何を決断させようとしているんだ。そのあたり、父ちゃんはあんまり頭良くないのよね。
たぶん乙女ゲームのあたしなら、貴族令嬢に遣ることを選択したんだろう。だいぶゲームシナリオと掛け離れてしまっているけど。悪役令嬢マリア・ド・デニム伯爵令嬢(仮)になルートなのかも知れない。
マリアは生きているから、入れ替わるって事は無いのかも知れないけれど。何しろ、デニム家には双子は居ない事になっているし。流石に貴族階級の戸籍は、ちゃんとチェックされているはずで、庶民の其れとは違っているだろう。
「で、父ちゃんは如何した方が良いと思う」
卑怯かも知れないけれど。あたしは質問で返す。
ますます父ちゃんの顔が、辛そうな物になってきた。未だに引かない腫れが、赤黒くなってきている。間違いなく内出血しているんだろう。青たん確定ね。
「……」
重たい沈黙が帰ってきた。父ちゃんもどうしたら良いか解んないのだろう。やっぱり頭悪すぎ。
「あたしが御貴族様になりたいって言ったら如何する」
「御前は貴族になりたいのか」
うわあ、質問の答えになっていない。馬鹿な会話かな。
「貴族の令嬢に成ったからと言って、幸せになれるわけでは無い。俺は間近で見ている。令嬢という物は、貴族にとって政略の駒でしか無いんだ。」
「なら、反対」
困り顔の父ちゃん顔が、青くなったり赤くなったりしながら、二言三言話す間に、約五分が経ってしまっている。ちゃんと話し終わるのに、一晩かかるかも知れない。あたし、明日ちゃんと仕事が出来るかな。明日変わってくれる子居たかな。
父ちゃんは頭を縦に振った。
此れは本音かな。あたしは、そうだろうなとは思う。
ただ、奥様が本気であたしを自分の娘にしたかったら、貴族の持っている権力を使ってくるだろう。その時は、父ちゃんと逃げちゃえば良いんだし。その気になれば、あたしを生きて捕まえることなんか出来ないのだから。
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