昔の話 8
メイド服はそのままに、あたしは自分の部屋を出る。一応、秘密のポケットに鎖を押し込む。まあ痴漢は出ないだろうけど。其れなりに自営できるようにしておく。最悪、相手の目玉をくり抜くようなことを為なければならないように成らないために、準備しておくのは優しさだと想う。鎖で叩かれるぐらいなら、大した事ないよね。
今回は、彼奴が迎えに来るから勘違い野郎は出ないだろうけれど。本人が、勘違いしていたら困っちゃうしね。それでも、お尻くらいなら触らせても良いけれど。何しろ彼奴は、攻略対象になるくらいいい男だし。ただ、十三歳の幼い女の子に興味を示すかは微妙かな。
彼の年齢から、遣りたい盛りだと思うしね。速いと既に男になっているかも知れないけれど。そんな余裕は、新兵である彼には無いかな。なんか、あたし気になって居るみたい。ヤバいかもしんないな。気を付けよう。
乙女ゲームさくらいろのきみに・・・。の攻略対象。しかもいきなりシークレットキャラクター。この時点で間違いが起こるとも思わないけれど。綺麗なハイスペック男子だし、なんか怖いような楽しみなような。
使用人用のでは入り口の鍵を開けて、その扉を引いた。ぎいという音と共に、扉が開くと。其処には薄い革製の胴着を着たレイの後ろ姿があった。腰には、軍支給のショートソードが下げられている。護衛としては正しい格好だけど、なんか物々しくない。
ここは四方を城壁に守られた、いわばお城の中なんだよ。あたしゃそれほど重要人物でもないし。自分を守ることの出来る、戦闘能力ありの女の子なんだ。
護衛を付けるのだって微妙だし。だいたい、襲った方が気の毒な目に遭うの確定なのである。父ちゃんみたいに強くは無いので、相手に対して手加減できないから、悲惨なことになる。間違いなく血を見るだろう。
彼の足下には、火の入ったランタンが置かれており。あたりを照らしている。教科書に書いてあるような、お迎えの姿だった。此れって、父ちゃんの命令かな。此れも訓練の一環と言えなくもないか。
「お迎えに伺いました。御嬢」
使用人用の扉が開いたのに気が付いた、レイが此方を向いて笑顔を浮かべた。熟々美形だと思う。事情ありとは言え大変魅力的な笑顔。
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