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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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昔の話 7

 女の子に対する言葉としては、あまりお勧め出来ないけれど。もう少し考えて言って欲しかったかな。あんまり余計なことを言うと、もてないぞ。あたしは心の中で言ってみる。

 まだ子供なのだから、女の子に対する言葉のチョイスが間違っていることは攻められないだろう。あたしも人のこと言えないけれど。何しろ元不良で、ちゃんとした教育を受けた訳でもない。それでも、一応高校までは通っているし、賢者様に色々教わっても居る。ただ、誰かと付き合うことは今一かもだけどね。

 実再リタとの交流は難しいなと、想ってはいるけれどね。もう少し色々と経験していれば、リタの心に寄り添うことが、出来たかも知れないとは想っている。

 この人は、本当に攻略対象になるほど、素敵な人に育つんだろうか。育つんだろうなとは想うけれど。今の処だいぶマイナスが多い気がする。このままだと、ヒロインちゃんが可哀想かも知れない。まあ、彼女には他に選択肢が一杯在るから問題ないかな。

 ただ、なんで悪役令嬢だったマリア・ド・デニム伯爵令嬢が、彼を失うと心が壊れるほど依存していたのだろう。今のあたしには謎すぎる。

 それからは、ごく在り来りな世間話をしながら、御屋敷に向かって歩んで行く。この時間帯は、庭師達が最も忙しくなる時間帯で、顔見知りになったオッちゃん達が、からかい半分で挨拶してくる。その台詞は中々辛辣で、中には下ネタが八割含まれている。

 このオッちゃん達が、本当はあたしがデニム家のお嬢様だって、知ったら卒倒してしまうだろう。そうなるつもりもないので、知らせずに済ませるけどね。

 この時代にセクハラなんて言う概念は全くない。在るとすれば、階級による関係のみだ。だから、これくらいは当たり前なのである。

 御屋敷の裏庭に回って、小さな使用人用の扉まで送って貰ったところで、あたしは足を止めた。使用人は、玄関から御屋敷に入る事はまず無い。勿論、そちらの方が仕事をする上で、良いのなら使うのだけれど。そう言う用が無ければ、使用人用の扉と通路を使う事に成る。今みたいに、遊びに行った帰りなら尚更である。

「夜に隊長の処に来るのか」

と、レイが聞いて来た。

「旦那様達が食事が終わったら、父ちゃんの所に行くつもり。あたしの晩御飯用意しておいてねって言っといて」

「結構遅くなる時間だな」

「おれ、迎えに来てやるよ」

 レイはそう言うと、踵を返して走って行ってしまった。別に迎えなんか入らないのにね。暗い夜道で、あたしに悪さできる奴なんか居ないのだから。



読んでくれてありがとう。


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