昔の話 5
亡国の王子様にしては下世話な言葉使い。其れも仕方が無いのかも知れないけれど。デニム家の私兵団の殆どが、領地に住む平民である。当然の事ながら、真面な教育を受けていない。兵隊になってから、教育を受ける者が大多数なのである。その中で暮らしていれば、言葉使いが悪くなってしまっても仕方が無いだろう。
しかも、父ちゃんの小隊は、他の小隊から弾かれた者の寄せ集めだった。いわば愚連隊なのだ。弓の腕は其れなりにあったんで、向いていたのだけれど。皆腕は立つけど、集団行動の出来ない連中だった。
実は全員訳あり集団だ。あたしの斜め後ろを歩いている、レイほど訳あり物件は居なかったけどね。此れは前世の記憶のあるあたしだから知っている事で、お口チャックしている。下手な事を言うと、藪蛇に成りそうだしね。それにどう説明して良いか解んないし。
「貴方随分腕を上げたわね。あたしももう少し真剣に練習しなくちゃ成らないかな」
あたしは笑いながら言った。やっぱり美男子は見ているだけで楽しかったりする。しかも、かなりの良物件。
生まれに問題はあるけれど、なんと言っても攻略対象。レイルートが開いた時に見たスチルから察するに、マリア・ド・デニム伯爵令嬢が好きだったのでは無かろうか。
なんか、彼が身代わりで死んでから。ゲームのマリア・ド・デニム伯爵令嬢が酷く荒れ出したのである。なんか、ぐれだしてしまったみたいで、悪役令嬢としても、むちゃくちゃな事をやり出したのである。
「少しばかり剛弓に慣れてきたからね。隊長の指導も的確で解りやすいし」
と、レイがニコニコ笑いながら言った。実に嬉しそうである。
「いずれ皆にも追い着かれちゃうかな。何か考えなくちゃ行けないよね」
正直、共通の話題が見つからない。相手は王子様、あんまり下ネタを話すわけにも行かない。マリアと、話すときに使っているような女の子っぽい話題は無理だろうし。相手が、ジャックなら下ネタやギャンブルの話で盛り上がれる。
だからといって、平民のあたしが経済や軍事的な事を話すわけにも行かない。正直可愛くないよね。そんな女。因みに、村長さんの処では、経済の話を為ていた。変な十二歳だったのである。
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