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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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昔の話 4

 エスコートするなら解るのだけれど、護衛である。並んで歩くわけじゃない。一応此れも訓練の一環らしく、護衛対象が安全に移動できるように、気を遣う。レイはあたしの斜め後ろを付いてくる。因みにその顔は、酷く生真面目な表情をしていた。

 本来なら、護衛任務となれば最低でも二人必要で、正式には認められないのだけれど。護衛対象があたしだし、それほど危険のある場所でもないから、少しの間厳しい訓練から抜け出せる御褒美と言ったところかなと、あたしは思っている。あたしはそんなにいい女でもないしね。

 まあ御令嬢でもない、一使用人を護衛するってどういう事なんだろう。父ちゃんに取っては、あたしは大事な宝物らしいから、護衛を付けるのも解るのだけれど。

 送り狼になったら、如何する積リなのだろうか。この間護衛任務に就いた、ジャックは隙を突いてお尻に触ってきた。次の瞬間には、彼の腕を挫いて遣ったけれど。

 ジャックは後で皆に聞いたのだけれど、父ちゃんの特別訓練を受ける羽目になったらしい。

 別に格闘技の訓練では、どこを触られても気にもならないのだけれど。其れが、訓練以外だと結構嫌な物なのである。

 あたしに触りたかったら、訓練の時に為ておけば良かったのにね。その時なら、いくらでも触り放題なのに。ただ、その時に変なこと為たら、間違いなく隙になるから。落とされる事は確定するけどね。こう見えても、あたしは結構強いのだ。

 それに訓練中は、側に父ちゃんが居るからね。変な触りかたしたら、特別訓練メニューが待ってる。兵隊さん的には、其れも悪くないのかも知れないけれど。何しろ、付きっ切りで訓練を見て貰えるのだから。ま、あたしゃ嫌だけどね。

「悪いね」

 あたしは何だか、照れくさくて意味の無い事を呟いた。

「なに。楽しみに成ってるんだから良いんじゃないかな。金を掛けるのも立派な楽しみさ」

「何しろ、ここには娯楽が少ないからな。皆良い息抜きになってると思うよ。少なくとも、街に繰り出して娼婦を買うよりはましだろう」

 あたしらは、顔を合わさないで話し続ける。真面目なレイは、護衛としての基本動作を繰り返している。一人での護衛は、基本あり得ないのだけれど。熟々レイは真面目だと思う。

 流石亡国の王子様、あたしみたいな者相手に話す内容が違う。何しろ、普通の兵隊は、殆どが平民なので、娯楽なんて単語は使わない。結構本を読んでいる事が窺える。


 

読んでくれてありがとう。


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