兵隊さん達との遊び 8
こうやって金をかき集めるのには、大変深刻な訳がある。勿論遊ぶ金も欲しいけれど、嵐の夜に孤児になったリタの養育費を捻出したいのだ。
結局、意地を張り通したあたしは、幼いリタを引き取ったまでは良かったのだけれど。所詮は子供の考えでしかなく。きちんと養育することが出来なかった。
飯を食わせて寝る場所を確保してやれば、良いって訳でなかったって事だ。メイド件護衛になったばかりのあたしには、小さい子供の面倒を見ていられる余裕が無かったのである。で、仕方なく領都で小さい子供の面倒を見る事を生業にしている、ローズ・ウォリア(35歳)に預ける事にした。全日預けるので、少しばかり割高だったけれど、父ちゃんの知り合いでも有り。安心だと思ったのである。
結局リタを裏切ったみたいになったけれど。子供を抱えて、伯爵家の住み込み使用人は出来ない。それこそ二人並んで路頭に迷う事に成りそうだった。
「御嬢。今度は負けないからな」
ヤンキー顔のジャックが、何時ものように吠えていた。あたし的には可愛い鴨だ。連中も事情を判って、あたしの遊びに乗ってくれていた。とってもいい男達ばかりだと思う。夫にするには微妙かも知れないけれどね。
あんまり賢くはないけれど、気持ちは綺麗で気の良い兵隊さん達だ。出来れば、このままずっと訓練だけをして暮らせると良いと思う。
このメンツの中では、顔面の良さではレイが最高だ。まだ甘さの残る顔立ちに、このあたりにはみられない金髪碧眼の濃いめの顔は、前世のトップスターを思わせる。流石、秘密の攻略対象劇ムズさんだ。
因みにあたしは、彼を攻略していない。あまりにも難しかったんで、途中で放り投げてしまっている。何しろこの人は、王都の学校に入学してこないばかりか。悪役令嬢マリア・ド・デニム伯爵令嬢の護衛を遣っていたのだから。名無し掛けるだけでも、簡単ではなかった事を覚えている。
「もう少し腕を上げたら、また腕試し遣ろうね」
「今度は負けねーぞ。絶対泣かしてやる」
「楽しみにしてやるよ」
やっぱり勝てれば、笑顔も湧いてくるってモンだ。機嫌良く皆にあたしが答えていると、鍛錬場に父ちゃんが足を踏み込んできた。何だか父ちゃんは、タオルで顔を冷やしながらこちらに向かってくる。
よく見ると、父ちゃんは誰かに殴られたのか顔が腫れ上がっていた。結構痛々しい有様になっている。この兵隊さんの中で、父ちゃんの顔を殴れるような人間はいない。少なくとも、あたしは知っている中だと二人しか思いつかなかった。
よんでくれてありがとう。




