兵隊さん達との遊び 7
あたしは的の方を見詰める。二人とも芯を捕らえていた。一射目の矢の位置はあたしの方が真に近い。因みにジャックは、僅かに芯から外れていた。
審判役の兵士が、使った矢を回収して走ってくる。実はあの役回りが、一番間違いなく金になる。何しろ絶対に損はしないのだから。実は掛け金から、少しばかりお小遣いを出す事に成っている。この人数だと、銅貨一枚と小銅貨二枚が払われる事に成っている。いわゆる公正な審判を期待するためには、其れなりに良い思いをさせておかなければならないしね。そうで無いとゲームにならないし。公正な審判は大事。
「今回も勝ったのは御嬢。どうしてそんなに強ーんだ」
審判役の兵士が声を掛けてきた。彼の顔は楽しそうに笑っている。どちらに為ても、懐が温かくなるのは確定しているのだ。今日の晩酌にエール一杯付く事は確定しているのだから、笑いが漏れてくるのは当然だろう。
「当然の事よ。だってあたしは父ちゃんの娘なのだから」
あたしはそんな事を答えながら、一寸寂しくなった。生みの親の事をあたしは知っている。その事をさっき言われたばかりなのである。例えその事を否定した処で、生みの親はあの人達なのだから。
奥様は兎に角、あたしは伯爵様の遺伝的繋がりがあると認めたくなかった。ぶっちゃけあんな屑の子供だと認めたくなかった。見た目は良いけどね。
レイが皆の金を集めた兜をあたしに渡してくる。その中には銅貨が八枚、小銅貨が四十枚入れられている。小銅貨を結構大量に使った奴がいる。
あたしは兜の中から、銅貨六枚を取り、秘密のポケットに入れる。何しろお仕着せのメイド服には四つも隠しポケットがあるのだ。大変便利に出来ている。時々着ることのあるドレスには、ポケットが一つも無い。その上結構重たく出来ている。
残りの銅貨をレイに戻す。
「二等賞の貴方は、銅貨二枚を取って残りは皆で酒のたしに為てね」
と、あたしが言って。にぱっと笑う。
「ラルフご苦労さん」
審判の役目を終えた、ひょろりとした体型の兵士を呼ぶ。あたしはポケットの中から、銅貨一枚と小銅貨二枚を取り出して渡した。こういった事はとても大事。もっとも、この金は後で仲間達との宴会で使われるだろう。こういった気遣いが出来るから、彼に審判を任せられるのである。
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