兵隊さん達との遊び 3
「また腕試し遣るんですか。俺たちも混ぜて混ぜて」
弓の鍛錬を為ている連中の半分が、手を上げながら言ってくる。因みに全員鴨である。手を上げなかった奴らは、未だにまともに的に当てることが出来ない連中である。鴨にも慣れない奴らである。
因みに手を上げた奴らの内、二人は半々であたしがやられるところまで腕を上げている。攻略対象になる彼は、三回に一回はやられるまでに腕を上げていた。それくらいで無いと、掛けになりはしないだろうけどね。
何しろ的までの距離が百五十メートルも在る。普通の弓なら山なりに撃たないと届かない距離だ。だけど父ちゃんに作って貰った弓は、特別重くて力だけでは引くことが出来ない。全身の力を弓に伝えなければ、狙いを付けることも出来ない。
今の処皆との賭けのルールは、百五十メートルの距離の的に当てる事が出来るかどうか。二本の矢を三十センチの丸い的に当てられる事が出来たかどうか。其れで勝負している。的に当てる事が出来たら、より真ん中に矢が当っている方が勝ちとなる。
「銅貨二枚くらいでどうよ」
あたしは提案する。何時もこれくらいが妥当なところだ。あまり多くを巻き上げると、兵隊さんが食っていけなくなってしまう。まあここに居る連中は、寄宿舎に住んでいるから。最低限、食うには困らないのだけれど。
「良いねー。お嬢こそ今度ばかりは泣かしてやりますよ。だいぶ俺たち腕を上げましたからね」
後から話に割り込んできた兵士が、下品な笑い声を上げて言ってきた。あたしのお尻に触って、特別訓練を命じられた男だった。このあたりの村から遣ってきているので、彼は未だに文字を書くことが出来ない。それでも、父ちゃんの特別訓練のおかげで、弓の腕は一番育っている。
その特別訓練は、泣くほど厳しい物だったけれど。本人にとっては良かったのかも知れない。どのみち、その特別訓練は全員が体験することになるのだから。
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