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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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兵隊さん達との遊び

 約百五十メートル程離れた、的に向かって山なりに矢が飛んで、的から外れた砂山に突き刺さる。因みに的に刺さっている矢は、僅かである。いかに鍛錬を続けているとは言え、使い始めてそれほど経っていない剛弓で、的に当てるのは中々難しいようである。

 兎に角距離がありすぎる。普通の弓では、水平射撃で矢を当てるのは至難の業である。兵士の中から、弓の旨い者を選抜して小隊を組んでいたとしても、流石に長年使い慣れている、ハーケン並に撃てる者は居ない。剛弓は、扱いが難しくかなりの習熟が必要な武器なのだ。

 あたしは、父ちゃんの小隊の鍛錬時間になったので、マリアの部屋から此方にやってきた。ちゃんとマリアには了解を得ているから、メイド長のサンドラさんに叱られる事は無いだろう。少し父ちゃんと、話して置いた方が良いかもしれないと思ったのである。

 父ちゃんの小隊のお兄さん達は、父ちゃんが居ないと少し緩くなる傾向がある。とは言っても、普通の弓を使えば其れなりに怖い人たちではあるのだけれど。未だに剛弓を引くのに、力を使ってしまう傾向があるみたいだ。

 もっとも、そのおかげであたしは結構稼がせて貰っているのだけれど。的当てゲームで、少しばかりお金を掛けて遊ぶ鴨が居る。一応此れも訓練の一環なので、父ちゃんには目を瞑って貰っている。

 因みに、あたしが弓を引けるのは父ちゃんに仕込まれたのと、前世で兄貴に倣ったからである。因みに、前世の兄貴は県大会で優秀な成績を上げていた。社会人になっても、続けていたから今頃はどこまで腕を上げているだろうか。辞めてるかも知れないけどね。

 あたしは、鍛錬場に足を踏み入れると。軽く頭を下げる。因みに此れは、兄貴にしつこく言われて身に染みついている作法だ。此方の世界では、あくまでも訓練場は技術習得の場所なので、こういった事はしないらしい。ただ、この父ちゃんの小隊に至っては、きちんと挨拶をするように訓練されている。

 弓を構えている奴以外の兵士が、あたしに気がついて敬礼を為てくれる。この連中にとっては、あたしは父ちゃんに次ぐ弓の名人と言う事になっている。しかも、あの厳しい隊長の一人娘だ。

 兎に角、父ちゃんはあたしの事に成ると、少しばかり理不尽怪獣に成る。何しろ、ここに集めれられた兵士達は、新兵では無いのに新兵扱いである。時々気の毒に成ったりするけれど、それでもあたしは遊びと称して金を巻き上げていたりしている。

「お嬢。今日は少しばかり機嫌が悪そうですね」

 金髪碧眼の、この部隊で一番若い男が声を掛けてきた。差が高くてがっしりしたこの男は、あたしの一番のお気に入りだ。あたしに金貨二枚分は貢いでくれている。兵隊の給料の事を考えると、一週間分になる。



 


 

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