奥様のストレス発散 4
隣国の首脳陣は、頭が膿んでしまっているのではないかと思う。半年前の一件でかなりの損失を出して居るはずで、いい加減に諦めてくれれば助かるのにと、アリスは心の底から思っている。
きちんと条約を結んで、此方にちょっかいを出すのを辞めて欲しい。そうしてくれれば、兵力を整えるために使われている財源を、他に割り振る事が出来る。現在の戦力は千人の兵士を抱えている。予備兵を含めれば一万と言った戦力となるのだけれど。所領から上がってくる、税収の規模の事を考えると少しばかり大きすぎる。
幸いにも借金を為なくても、何とか伯爵としての体面を保つ事が出来ているけれど。其れも飢饉でも起これば判らなくなってしまう。本当は、夫にも協力して欲しい処なのだけれど。あの人だと、下手な事を遣らせると、ろくな事になら無いような気がするので。熟々彼を素敵だと思った自分が情けない。当時は子供だったのだから仕方が無いのだけれど。御父様が、ちゃんと調べていてくれれば、今になってこんな情けない思いを、為なくて済んだかも知れない。
今なら、絶対に願い下げだ。その人となりが解ってから、結婚できれば良かったのだけれど。女のみには、相手を決める権限が無い。そういった自由意志は、貴族の身には認められていないのである。
そして、結婚してから性格が変わってしまえば、どうする事も出来ない。籍を入れてしまえば、簡単には抜く事の出来ない法律が存在している以上。アリス・ド・デニム伯爵夫人は我慢し続けるしか道は無かった。
そういった事で、貴族の夫婦の中には、お互いに別の相手を作って、冷え切った関係を続ける者も少なくは無い。でも、何故かアリス・ド・デニム伯爵夫人は珍しく、情夫を作らずに過ごしている女性である。貞淑な妻というわけでは無い。何しろ、彼女は既に夫に対する愛情は枯れ果てている。彼が、どこぞで野垂れ死にしたと聞いても、眉一つ動かさないだろう。
今はそんなことより、娘の事が大事だった。なんと言っても、命がけで産み落とした子供達なのだ。その大事な子供達が、彼女の手の届く処に生きて存在している。
とても嬉しい事ではあったのだけれど。今回夫が、本人にばらしてしまったから、此れからどうなるか解らなくな成ってしまったのだ。
読んでくれてありがとう。




