奥様のストレス発散 3
彼らは新兵では無い。その証拠に、着けている革の胴着は所々擦り切れている。普段使っている弓なら、自在に使ってみせる者達である。流石に身の丈より大きな剛弓を引くのは、中々容易でないらしい。
リコの発案で作られた、剛弓は取り回しが難しい代物で、主戦力にする事は難しいかも知れなかった。なんと言っても、この弓を引ける射手を作り出すのが難しいのである。兎に角弓の重さが、普通の弓の1.5倍もあるのだ。単なる腕力で引く事が出来ないらしく。技術を習得する必要がある。
それでも、相手の間合いの外から撃つ事が出来るのは魅力的だった。主戦力には出来ないかも知れないけれど、そういった攻撃方法を持っていても良いだろう。そう考えて、剛弓小隊を編制する事にしたのである。
その小隊を指揮するのが、リコの父ちゃん事ウエルテス・ハーケンだ。この弓を作ったのは、彼なのだけれど、その構造を提案したのはナーラダのリコだそうで。アリスは娘は天才なのではないかと思う。令嬢としては問題かも知れないけれど、領地を守る者としては素晴らしい才能だと思っている。
因みに、同じ構造の弓をナーラダのリコは自在に撃つ事が出来る。勿論体格が違いすぎるので、同じ大きさの弓では無かったけれど。本人の身の丈より大きな弓である。
彼らが弓の扱いに難儀している様を眺めていると、ハーケンがマリアの気がついたらしく。黙礼してくる。今は鍛錬の最中なので、あまり邪魔をしてくれるなと言っているようだ。本来なら、きちんと敬礼を為なければならないのだけれど。マリアはその程度の無礼は気にしない。其れを咎めて、事故でも起こったら果てしなく大きな損失となる。
一人の優秀な兵士を作るのは、かなりの経費を要する事で。従って、簡単に戦争をする人間の気が知れない。其れは莫大な損失を覚悟する事なのである。その税収を得るために、どれほどの人間の労力が必要になるのか、考えたら解りそうな物だ。
暑いですね。熱中症に成らないように気を付けていきましょう。




