奥様のストレス発散 2
デニム家の屋敷には、三百人からの兵士が常駐している。そして、屋敷で最も広い敷地が屋敷の裏に当る場所に有る。良く整地された場所が、デニム家が誇る、私兵団の鍛錬の場所である。良く訓練された、兵隊は領地の治安を支える最低限の力となっている。
アリス・ド・デニム伯爵夫人は、平和は戦力の裏付けが在るからだと考えている。力があればこそ、平和をもたらす事が出来る。その力がある事こそが、善良な領民の生活を守る事に成るのだから。ここで訓練をしている兵隊のほとんどが、文字も読めない貧しい平民のでであったのだけれど。
ここでは義務として多くの事を学ぶ事が出来る。兵役の義務の中には、兵役が終わった時に役に立つ教育を受ける事が出来る。一般兵は、税の代わりに兵役でまかなう事が出来るけれど。この兵役の間に、自分から学ぶ意志を持っていれば、読み書き計算を身につけることが出来る。
勿論、そのまま職業軍人の道に進む事も出来る。彼らはこの兵役の先に、良い生活への夢を見ているのだ。だから、この鍛錬場に居る、兵達は生き生きとしている。訓練は過酷で楽では無い。それでも、いざという時に生き残れる可能性が格段に上がる。
勿論有事とならなければ、ここで訓練している兵は実戦を経験しないで兵役を終える事が出来る。彼らに払っている給料が、この領地の安全を維持するための経費となる。それだけでは無い。彼らが生きて故郷に帰る事が出来れば、ここで学んだ物事が他の者達に伝播する事を期待できるかも知れない。
アリス・ド・デニム伯爵夫人が、領地の統治をする様に成ってから、座学を教育課程に組み込んだ。兵士が個人的に判断する能力を持っているのと、指揮官だけが持っているだけより迅速に動く事が出来る。
たとえば全員が、文字を読む事が出来れば、命令を早く正確に伝える事が出来る。それだけでも迅速に動く事が出来る。それだけでも、緊急時に動くことが出来れば、結果が違ってくる。
訓練場の一角で、地味な訓練をしている十人からの兵士の一団がいた。矢を番えず弓を引く練習だった。射的場は、この敷地内には無い。ここは近接戦闘の訓練や、基礎的な集団行動の訓練をする場所なのである。
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