マリアの部屋にて 6
「リコはどのようにしようと思っていますの」
部屋が暖かくなったところで、部屋にセットされている小さなテーブルにお茶を用意為ているときに、マリアが聞いてきた。何を心配しているのか、あたしの顔をちらちら覗き見てくる。
「どうって?」
「貴方は私の妹なのだから、有るべき立場になろうとは思わないの」
「あたしの父親は、ナーラダのハーケンだよ。其れは変わんないよ」
どうも地が出てきた。この言葉は、御貴族様との会話に向かないだろうなぁ。少し気持ちがぐらぐらしているみたい。解っていたけれど、あたしは父ちゃんと母ちゃんの子供だと、思いたいんだろうな。
だって、前世の時より仲の悪い夫婦の子供なんかになりたくない。それなら、仲の良かった父ちゃんと母ちゃんの子供で居た方が良い。
父ちゃんは命令違反を為て、あたしを森の奥から救い出してくれた。赤ちゃんを失ったショックで、可笑しくなってしまった母ちゃんのためだとしても、それでもあたしは幸せだった。色々厳しく育てられたけれど、前世で不良遣っていたときよりずっと良かった。
村の衆は皆気持ちのいい人ばかりで、付き合うのにストレスに成っていなかったしね。まあ、生きるので精一杯だったから、可笑しな事に成りようが無かっただけかも知れないけれど。其れと少なくとも、村長さんは真面な人だったしね。
「私の姉妹に成る積リはありませんの」
「今の処はね。たぶん双子は忌み嫌われるでしょう。このまま、貴方の影武者件メイドを遣っていた方が、色々と都合が良いような気がしますし。何より、この年まで村娘を遣っていたあたしには貴族の御令嬢なんて向いていないと思う」
貴族の御令嬢って言う立場は、とてつもなく複雑で難しい。その上、あのデイモン・デニム伯爵の娘には成りたくも無い。マリアに言えないけれど、腹違いの弟妹が何人も居るのだから。そんな難しい家族の一員には成りたく無いのだ。
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