マリアの部屋にて 4
暑いですね。熱中症に気を付けて。
「可哀想だなと思っているのだけれど。そんな事、気にも成らないの?」
マリアが、あたしの肩に手を触れながら聞いてきた。
「別に気にするような事ではありませんよ。だって、まだその捨てられた赤ん坊だとは決まっていないのだから。もし、その捨てられた双子の片割れだとしても、あたしは捨ててくれてありがとうと言いたいですね。だって、あたしを愛してくれる家族に巡り会う事が出来たのですから」
此れは割とあたしの本音だ。こんな夫婦仲の悪い家族の元で育てられるより、其れが他人だとしても、愛してくれる家族の方が万倍良い。前世のあたしの親は、仲が悪い癖に離婚を絶対しない人たちだった。母親なんか、旦那を憎んでいるからこそ、離婚しないと言っているような人だった。なんか、デニム伯爵家の様子が似ている気がして、あたしは嫌な気がして仕方が無かった。
逆に、マリアが可哀想な気がしている。だって、貴族に生まれて良い暮らしは出来ているけれど。両親の仲はあまり良くない。それでいて、別れる事も出来ないで居るのだから。
今はそれだけしか知らないから、マリアはそう言う物だと思っているのだろうけれど。他の家族の有り様を知るようになったら、決して幸せな家族の形だと思えなくなるのだろう。そして、いずれは何処かで新しい家族の中に入る事になる。
その形が、アリス・ド・デニム伯爵夫人のようにお婿を取る形になるのか、よりすてきな旦那様の処に嫁ぐ事になるのかは解らないけれど。
さくらいろのきみに・・・の攻略対象のなかに、優良物件はあるけれど。その人に懸想する事で、盛大に国共々破滅の道を突き進む事になるのか。それとも他に幸せの形を見付ける事が出来るのか、今のあたしには解らないのだけれど。出来れば彼女にも幸せになって欲しいと思う。
何しろあたしは、マリアに辛い役回りを押しつけてしまった訳なのだから。このまま進んで行く先には、国を傾けてしまうかも知れないイベントが待っている。その事が解っているけれど、その事を彼女にあたしが告げる事は出来ない。だって、間違いなく危ない人だと思われるに違いない。どう説明したら良いか解んないしね。
読んでくれてありがとう。




