マリアの部屋にて 2
「さあ。私には解りません。何しろ私は、その事をさっき知らされたばかり何ですよ」
「それもそうね。貴方は私のドッペルゲンガーですものね。でも、貴方が私の妹だったら良いなって思うのだけれど」
マリアが意外な事を言ってきた。ただ、妹というのは気にくわない。ゲームの設定では、あたしが姉なのだから。この国に、双子はいないので姉と妹って言う呼び方は存在して居ないので、どうでも良い事ではあるのだけれど。まあ、ドッペルゲンガー呼ばわりよりは良いかな。
「後で、父ちゃんに確認してみますね。本当の事を言ってくれるか判りませんけれど」
あたしは、知らない振りを為ながらマリアに応える。始めから事情を知っていたあたしには、一緒になって驚いている風には見えないかも知れない。何だかマリアの顔は、青ざめて本当に混乱しているように見える。
普通にショックだよね。何しろ普段怪物扱いしていた、メイドが自分の姉妹だって、自分の母親に言われたのだから。今明らかになる、出生の秘密って感じだろう。あたしには今更だけどね。
「リコもショックですわね。何しろ御爺様に捨てられたなんて……」
マリアがそんな事を言ったので、あたしは視線を上げて彼女の顔を見た。
マリアの声には、あたしに対して気遣うようなものがある。あたしの設定は、酷いものだった。何しろ、双子に生まれたから捨てられてのだから。実際この国の医療水準だと、双子はまず生き残らない。うっかりすると、母体と共にあの世に行く事だってあるのだ。出産は命がけの大事業。其れが二人もとなると、桁違いに危険な事なのである。
だから、母ちゃんが産み月になったときに、デニム家の権力を使って。このあたりにいる名を知られている、名医をかき集めていたのである。その為に、母ちゃんと父ちゃんの間に生まれてくるはずだった、赤ちゃんを助ける事が出来なかった。だから、ゲームの方の父ちゃんは復讐のために、あたしを育てた。もしかすると、此方も同じ理由で育てたのかも知れないけどね。
「うん。大丈夫ですわ。だってあたしには父ちゃんも母ちゃんも居るし」
本格的に暖炉の火が大きくなった処で、あたしは立ち上がる。マリアと目が合った。
最近涼しいのでありがたいですね。




