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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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伯爵夫人の告白 8

「貴方は黙っていて。こんな迂闊な事を言っておいて、相談する事すら出来なくなってしまったのですよ。解っていらっしゃるの」

と、アリスが言った。内心の感情が、その言葉に乗っているよう強い声音だった。

 あたしは、この人がこれほど堅い声音で話すのを初めて聞いた。かなり怒っているのだろう。

「だが、君は未だにハーケンから本当の事を聞き出せていないのだろう」

「何故その事を知っているのですか?」

「こう見えても、私はデニム家の頭首なのだから、其れなりに目も耳も持っていて当然だろう」

「その割には、貴方は御自分の娘が誘拐されたにもかかわらず。王都から動こうと為されませんでしたわね。其れが、半年も経ってからこうして戻ってこられる。何故ですの」

 夫婦喧嘩が始まっちゃったよ。この二人は、完全に冷え切ってしまっているのだろうな。あたしは何で離婚しないのか、真剣に聞き出したくなった。せめて、自分の子供の前では喧嘩しないようにしてほしいものである。

 あたしの隣に座っているマリアと目が合った。彼女はどうして良いか解らないのか、ものすごく不安そうな表情をしている。

 黙って聞いていると、どんどん話がそれて行きそうな気がする。仕舞いにはマジ喧嘩に発展しそうだ。

 たぶん奥様の方が強いだろうけれど、親同士の喧嘩を見せられる子供のつらさは、嫌と言うほど解っている。あたしはこの二人が、自分の親だとは思っていないので、それほど辛くは無い。でも、マリア・ド・デニム伯爵令嬢は別だと思う。しかも、その喧嘩の元があたしだって言うことが、なんとも堪らない。

「あの、いったいどういう事なのか、あたしにも解る様に説明して欲しいのだけれど」

 取りあえず、あたしは二人の気が逸れるように声を掛けた。このまま黙っていると、マリアが聞きたくも無い事が、奥様の記憶のなかから引きずり出されてきそうな気がしたのだ。さぞかし聴くに堪えない醜聞を聞かされるに違いない。取りあえずあたしが奥様の子供だと言う事について、話してくれるように誘導する。その話の方が、夫婦喧嘩を見ているよりましだと思う。



 


遅れました済みません


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