伯爵夫人の告白 6
「私だって、自分の娘は見てみたかったからね。何しろ獣腹の子供だった事が、世間に知れ渡る前に、何らかの対策を取らなければいけないだろう。だからその相談をするために着たのだけれど……。迷惑だったか?」
デイモン・デニム伯爵が、意地の悪い表情で言った。未だにカップの紅茶に口を付けていない。
「はっきり言って、迷惑ですわ」
と、奥様がきっぱり言い切った。
解っていたけど、奥様はとっても気が強い。だから女傑と呼ばれているのかも知れない。その割には、あたしを捨てる事を止められなかった。何故出来なかったのか、聴いてみたいけれど話してはくれないだろうな。
「貴方は少し黙っていてくれませんか。私がその頃の事を此れから話すのですから」
「その前に、何故私がマリアの姉妹だと思えるの?」
あたしは聴くまでも無いだろうけれど、一番気になっていた事を質問する。似ていると言っても、赤ん坊の時に捨てた娘が、こうして生きていると思えるのが不思議だ。だって、普通なら森の中に捨てれば、あっという間に獣の餌になってしまう。他人のそら似の可能性だってあるのだから。
思い起こせば、奥様は最初から、あたしが娘だと思っていたみたいだった。顔を見ただけで、そう思うのは勝手だけど。でも、それだけじゃ無かったはずで。ただの女の勘だけじゃ、実の娘だって確信できないだろう。
だいたい、あたしだって捨子だとは父ちゃんに、聞かされていないのだから。本当は納得いかない事のはずなのだ。なんと言っても、あたしは父ちゃんの娘だと思っていなければいけない。其れを認めてしまったら、あたしと父ちゃんの関係が無くなってしまうかも知れない。其れは嫌なのだ。
「そこから話して上げなければいけないのですね」
奥様がそう言うと、カップの紅茶に口を付ける。
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