伯爵夫人の告白 4
悪役令嬢になるフラグは勘弁して欲しい。そちらの役割はマリアに任せたい。その為に彼女を助けたのだから……。
それに、あくまでもあたしは父ちゃんと母ちゃんの子供なんだ。前世の時と違って、二人は心の底から愛してくれたのだ。だから、今更親だと言われても困ってしまう。一応悪役令嬢の役割を押しつけた手前、マリアを守ってやろうと考えているけれど。
今のあたしには、扶養している家族が居るのだ。結構この立場は良い金になるからね。その金はリタの養育に必要だし。それ以上に、貴族になんか成りたくない。だって、伯爵夫人の生活を見ていると、全然楽しくなさそうなのだ。
好きでもない旦那様を食わしてやりながら、領民の生活のために心を砕いている。側で見ていると、とんでもなく大変そうだし。旨く出来なかったら、その責任をとらされる。
あたしらみたいな庶民の目から見たら、何時も贅沢して社交と言って遊んでいる。そんな物だと思っていたら、伯爵夫人の日常はとんでもなく忙しいものだった。勿論、人を雇い入れることの出来る立場ではあったから、楽をしようと思えばいくらでも出来るにもかかわらず。きちんとした領政を為ている。近くで見ていると、そんなに贅沢して遊んでいるようには見えない。
侍女のドリーさんに聴いた話だと、貴族らしく遊んでいるのは旦那様の方らしかった。この旦那様が、もう少し真面な人なから奥様も楽が出来るらしいけれど。そうは成らなかった。
「こんな事になってしまって、申し訳ありません」
あたしに伯爵夫人が頭を下げていた。
「奥様そんな事どうでも良いことです」
あたしは思わず声を上げた。正直どうしたら良いのか判らない。怒ってみせれば良いのか、ただ困惑い為てみせれば良いのか判らなかった。事情はわかっているけれど、今は判らないことになっているのだ。
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