伯爵夫人の告白
あまりの暑さに、帰ってくるとダウンしていました。済みません。
どうしよう。
あたしは豪華な椅子に座って、デニム家の方々の顔を見回していた。予想外すぎる展開にどうしたら良いか解らない。マリアに似ているから、彼女の護衛件メイドとして雇われたはずで、捨てた子供だと気付いているとは思わなかった。
父ちゃんは、あたしが赤ん坊の時に捨てられていた事を、話してくれた事は無かった。前世の記憶が戻った時までは、あたしは父ちゃんと母ちゃんの娘だと思っていた。あたしは二人に大事に育てられた。村の衆からも愛されていた事を覚えている。
本気であたしのことを、母ちゃんは自分が産んだ子供だと思い込んでいた。だから、絶対にあたしに捨子だったなんて言うわけが無かった。村の衆も其れが解っていたのか、あたしが捨子だったということを誰も言わないでくれた。
だから、あたしは今でも父ちゃんと母ちゃんの娘だと思っている事になっている。だから、父ちゃんは乙女ゲームのように絶望して、悪い事に手を染めないで居てくれている。生前のかちゃんは、父ちゃんにとって何物にも代えがたい大事な宝物だったのだろう。あたしは頑張って、父ちゃんの宝物になった。実際大変だったのだけれど。
マリアを殺して、あたしが彼女に成り代わる。そんなことは起きないようになったと思っていたのだけれど、何だか悪役令嬢としての強制力が働いているのだろうか。この国を破滅させる悪役令嬢になんか成りたくは無いのだけれど。
「リコ。いきなりでごめんなさいね」
アリス・ド・デニム伯爵夫人は、あたしに対して頭を下げてくる。彼女の顔はかなり困り顔である。あたしの隣に座っているマリアは、未だに事情がわからない様子である。テーブルの上にあるティーカップの紅茶は、口を付けられないまま冷えてしまっている。
「マリアも驚いたかしら」
「……」
マリアは、どんな顔を為て良いか解らないらしく。少し青ざめている。
それはそうだよね。あたしなんかが姉妹だなんて聞かされたら、混乱してしまうよね。同情するわ。
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