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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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嵐の中

ありがとうございます。

 暴風雨は、荷馬の足下を危うくする。領都の側まで来ているので、路上は平たい石で舗装されており。荷馬車の車輪を捕られて、動けなくなる心配は無いだろう。領主様に行政手腕のおかげで、予定通りに行動できそうである。

 あたしは、ランタンを掲げて、馬の足下を照らす。父ちゃんは、馬を御するので精一杯なので、あたりに警戒するのはあたしの仕事である。身体に当たる雨粒は視界を狭める。気を付けなければ、荷馬車もろとも引っ繰り返ることも考えられる。

 あたしはこの嵐は台風の影響だと思う。滅多にこの内陸まで入ってくることは無かったが、年に二個くらいは、入ってくることがある。自然災害ばかりはどうすることも出来ない。前世の天気予報はたいした物だったんだなと思う。みんなで耐えるしか無い。

 雨が降るのは判っても、この世界の人には何時どれだけの雨が降ってくるかなんて、予測する事なんか出来ないから、誰かなんとかしてくれないかなと思う。其れこそ今世の人間に言わせれば、奇跡の力に違いない。

 考えてみれば、人工衛星からの映像なんかは神の見ている物だろうし。其れこそ魔法だから・・・。

 この嵐の中を動いている荷馬車は、あたしらの物以外には居ないみたい。下手に動けば事故に遭う可能性が、馬鹿みたいに高くなる。

 街が近くなかったら、あたしらだって、どこかに避難して、やりすごす事を考えたかも知れない。あと三十分も走らせれば、領都までは行けるはず。さすがに荷馬車でお屋敷に向かうことは出来ないだろうから、領都の宿に緊急避難することになると思う。

 領主の屋敷は、小高い丘の中腹に建っていた。この天気では荷馬車で向かうのは無謀だろう。

 騎馬が走る音が、後方から聞こえてきた。その音に、思わずあたしは後ろを振り返る。

 あたしはランタンの明かりを必要としない。この暗さの中でも、かなり遠くまで見ることが出来る。

 父ちゃんに前に、猫みたいに光って見えるって言われたことがある。あたしは他の人とは違う視力を持っているらしい。

「後方から騎士様が来るよ。少し道を空けるようにして、かなり焦って居るみたいだから、何かあったのかも知れない」

 父ちゃんにそう怒鳴ると、ランタンを高く上げて、くるくると回した。先に行けと合図する。

「かたじけない」

 騎士様一言、それだけ怒鳴り追い抜いて行く。

 

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