残念な父親 13
困った事に、デイモン・デニム伯爵とは親子関係である。誰もあたしにその事を話してくれていないけれど。
前世のゲーム知識を持っているあたしは、マリアと姉妹だと言う事を知っている。半年の間、奥様は何も話そうとしなかった。父ちゃんもその事に触れる事は無かった。出来るだけその事を避けて居るみたい。そんな事を知らされたからと言って、何が変わる訳でもない。
どのみちあたしは、父ちゃんの娘であることに変りが無いのだから。デニム家の令嬢に成りたいと思っていない。だって、破滅フラグが立ってしまうかも知れないのだから。せっかくマリアを助けることで、悪役令嬢にならなくて済むように為たのに。其れが台無しになってしまう。
何しろ今の生活は結構気楽で、其れなりに贅沢な生活が出来る。無理を為て貴族令嬢になんか成りたくない。此れまで半年間、奥様の生活を見ている限り。決して幸せとは言えない気がするのだ。
何しろ家のために自分の気持ちを犠牲に為て、色々と我慢しなければならない。それだけじゃ無い。まるで分刻みのスケジュールを、熟さなければ行けない立場なんかになりたくなかった。そういった仕事を熟したからと言って、誰に褒められるでも無い。しかも結果が悪ければ、責任をとらなければならないなんて、まっぴらだった。
兎に角なんちゃってメイドを遣っていた方が楽だ。使える金も随分と増えたし。少なくとも、あたしが悪役令嬢の役回りを演じなくても済む。
マリアに知恵を付けてやれば、戦争を回避できるかも知れない。当事者になれば、何かと動きづらくなるかも知れないから。このままなんちゃって伯爵令嬢を遣ることで、美味しい思いを為ていたい。
「君が私の娘なのか?」
なんか可笑しな言葉が聞こえた。一瞬あたしはその言葉が理解できない。何を言ってるんだ、このおっさん。
あまりにもいきなりの言葉に、あたしは惚けてしまう。待ってくれ。其れって本当はスキャンダルに成る事だから、秘密に為たいことじゃなかったのか。いわゆる公然の秘密って奴だ。
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