残念な父親 8
読んでくれてありがとうございます。
待つこと二時間半。
ようやくデイモン・デニム伯爵の一行が到着した。だいたいの到着時間は、物見の尖塔の兵隊さんから、連絡を受けて、屋敷の主立った者達がお迎えに出る。当然のように、あたしもマリアの隣に立たされている。ちなみに、アリス・ド・デニム伯爵夫人はマリアの右隣に立っている。此れって使用人の立っている場所では無いよね。
ちなみにあたしの左隣には、執事のヘクター・リントンさんが綺麗な立ち姿で立っている。主立った使用人の中でも、この人は別格扱いされている。他の使用人達は、かなり後ろに控えて立っていた。
あたしなんか、本当はお出迎えの中に居られないはずなのだけれど、マリアの隣に来るように言われてお出迎えの列に紛れ込んで居る。何故か、あたしは家族枠に入れられてしまった。
今気付いたのだけれど、此れって家族扱いされていない。真逆とは思うけれど、奥様はあたしが娘だって事に気付いているのかな。あった時から気付いていて、あたしを取り込むために、こんなまどろっこしい事を為ている。本当はあたしが、デニム伯爵家の娘だって、言ってきたからと言って、父ちゃんが其れを肯定するわけが無いけどね。
何しろ父ちゃんは、デニム伯爵家に対して恨みを持っている。此れはゲームの設定だから、父ちゃんに確認した事が無いけれど。本当に怖いことを考えていたらいやじゃん。たぶん大丈夫だと思うけれど、復讐のために命をかけるような馬鹿なことを遣らせたくは無い。だって、皆死んじゃう事になるんだよ。
だいたい、ゲームのオープニングシーンは父ちゃんの復讐の始まりだった。まずはマリアを殺して、あたしをマリアとしてデニム伯爵家に送り込む。そこからデニム伯爵家の斜陽が始まったのである。
その復讐はかなり雑で、行き当たりばったりの自爆だ。実際ゲームの父ちゃんは、ゲーム中盤には舞台から退場してしまっている。生きていたのかどうかは、ゲームの中では語られていない。
ゲームの舞台は、あくまでも王都にある貴族の子供が通うことになる学校が舞台だったからである。今考えると、ものすごく無理のある設定だと思う。




