嵐とともに
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今日は朝から雨が降っている、風が少しばかり強い。ここは大陸の中でも、内陸に当たる場所なので、台風の影響は大きくならないだろうが、それでも、全くないとは言いきれない良い感じの場所なので、嵐を覚悟しなければいけないだろう。
あたし達親子は、荷馬車の御者台に座って、先を急いでいた。雨が降り出してくるのは予想していたけれど、思っていたより降り出すのが早い。降り出す前に領都までは行けるはずが、最悪な天気になってしまう。
「読み違えたな」
忌々しそうに馬のオウルの手綱を操る。荷台には、お屋敷に持っていきたい荷物を載せている。その荷物の上には、分厚い布で作られた、幌が乗せられている。気休めには成るだろう。
あたし達は、少し道の脇の下草を刈ることで、馬車を止められるように工夫された場所に、よけて止める。あたしはすぐに取り出せるように、荷物の箱の一番上に押し込めていた、分厚い布で作られてた雨具を二着取り出し。父ちゃんにでかい方を渡す。小さい方はあたしのだ。
さすがにこの雨具は、前世の物と違って、重いし時間が経つと、雨を完全に弾くわけでも無いので、時間が経つと下着までびしょ濡れになる。それでも使わないよりはましと思って、身に纏うしか無い。この世界にはポリエステル製品などどこにも無いのだ。
「暗くなる前に領都までは、着けるとは思うが少し無理した方が良いかもしれんな」
「そうかもね。雷が鳴り出してるから、かなりやばいかも知れないね」
遠くの方から、雷のごろごろという音が聞こえる。しばらく経ってから、稲光があたりを明るく照らす。冷たい風が、あたしの分厚い雨具をはためかせる。
荷馬車の馬が草を食むのを止め、びくりと首をあげる。その顔は怯えている。父ちゃんは、たずなをひきしめ、落着かせるように声を掛ける。
この馬は、父ちゃんが調教した馬だ。簡単にはパニックに成らないはずで、これくらいの嵐の中でも、問題なく走らせることが出来る。
あたしは荷箱の中から、ランタンと火口箱を取り出す。父ちゃんは、雨具を広げて、あたしと火口箱が濡れないようにしてくれる。
急速に辺りが暗くなってきた。明かりが無ければ、立ち往生することになってしまう。さすがに荷馬車を置いていくわけにはいか無い。結構な財産を乗せているのだから。