残念な父親 7
あたしはそっと溜息を吐いて、階段を降りるマリアの後ろについて降りて行く。この尖塔への階段は、狭くて足下が悪い。当然のごとく昼間でも暗い。あたしには問題の無い暗さでも、彼女にとっては怖い階段だろう。
「あたしが先導しようか?」
「良い。決して真っ暗って訳でもないし」
この階段を使う可能性があるのは、当番の兵士だけのはずで、御令嬢がこの階段を使うことは無い。簡単に言うと、唯一の灯りは所々に設置されている、明かり取りから差し込む灯りのみだった。天気次第で、ランプを使わなければこの階段を移動するのも難しいだろう。
何しろこの階段には手すりも無い。この階段を使う人間の安全など考えていない。当然のように、一段一段が高いのである。よほど慣れていなければ、階段を転げ落ちる。
この御屋敷にはこういった場所がかなりあった。こういった場所は、基本的に使用人だけが通るところだけである。ちなみにあたしはこの御屋敷の中の、秘密の通り道を把握している。全部の場所を確認するのに、十日は掛かってしまったけれど、結構楽しかった。
この御屋敷に来てからと言う物、あたしの身体のスペックにびっくりしている。前世の頃の記憶が、あたしの身体の使い方を邪魔してしまっていたみたいだ。村の同い年の連中と比べて、か成りよかったけれど。此方で私兵連中と遊び出すようになってからは、驚く程良くなっている。勿論栄養状態が良くなったってのもあるだろう。力も強くなったし、胸の膨らみもかなり大きくなった。マリアより立派になっている。
そのあたしのスタイルを見た、マリアがあたしに付いてジョギングをするようになった。この胸の膨らみは、弓を使うせいだと思うけどね。この胸の膨らみはほとんど筋肉だと思う。
マリアが足を滑らした。あたしはとっさに彼女を抱きかかえる。彼女の付けている香水のかおりがあたしの鼻を刺激する。
「危ないですよ。足下にお気を付けてください」
ありがとう、あたしの運動能力。この筋肉の性能は、マリアの体重を軽々と支えることが出来た。
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