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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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残念な父親 4

「御父様」

 あたしの隣に立っているマリアが、嬉しさのあまり令嬢としてどうなのって、言われるような大声で叫んだ。彼女は自分の父親が好きなのだろう。あまり側に居ない父親の駄目なところが見えないのだ。わずかな時間ならいい顔をすることも出来るから。夢を見せることも出来る。

 前世でもそうだったのだけれど、父親は長い時間付き合っていると、ダメダメなところが見えてくる。臭いもそうだけれど、家に居る父親は駄目なところが多いような気がするのだ。仕事を為ている男は、時々格好良く見えることもあるのだけれど。それ以外は残念な生き物なのである。

「ここからじゃ聞こえないから」

 ついあたしの地が出てしまう。伯爵令嬢相手に掛ける言葉では無いよね。ここには、其れを咎めてくるような人は居ないから問題にもならないけどね。何しろここにはマリアと、餌付け済みの登板兵士がいるだけだ。

「良いじゃ無いの。本当に久しぶりなのだから……」

 少しきっとした目で睨んでくる。黒い睫に縁取られた瞳が、少しつり上がっている。

 あたしはこんなに可愛らしかったっけ。双子だからそっくりなのは当然なのだけれど、あたしのイメージの中にはこんなに可愛らしくなかった。ゲームのスチルの中の、マリア・ド・デニム伯爵令嬢は、綺麗だけど凄味があった。其れはあたしなんだけどね。

 最近のマリアは、あたしの影響なのか令嬢らしくない言葉を使うように成ってしまっていた。出来れば気を付けて欲しい。でないと、侍女のドリーさんにお小言を言われることに成る。あれはあれでしんどいのだ。

 あたしの記憶に中にある、デイモン・デニム伯爵はゲームの設定としてしか無いのだけれど。マリアが国を傾かせる令嬢になる要因の一つなのである。いわばフラグのなのかも知れない。あたし的にはお近づきに成りたくは無いけれど、父親じゃ仕方が無い。今の処、赤の他人と言うことに成って居るのだから、あたしには関係ないのだけれど。この半年間の付き合いで、意外なくらい情が湧いてきているマリアのことが心配になってくる。



読んでくれてありがとうございます。

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