残念な父親
抜き打ち試験を終わらせて、エディ先生に褒められて。授業が終わるとあたしとマリアは連れ
だって、この屋敷で最も高い尖塔に登って、王都のある方に広がる平原を眺めている。この尖塔は、見張り台として機能しており。
あたしの後ろには、当番の兵隊さんが苦笑いを浮かべて、あたし達を見詰めている。あたしは良く来るから、顔見知りには成っている。実は父ちゃんの弟子の一人だ。
「御父様の馬車はまだ見えてきませんわね」
うきうきしているマリアが言った。最近の彼女は、あたしの影響で結構お転婆になった。御父様の馬車を早く見たいと言い出したから、この見張り台に二人で来ることにしたのである。あたしもこの尖塔の上は、嫌いじゃ無いけれど。少しばかり寒い。
良い天気なのは良いのだけれど、風は未だに冷たいのだ。そして遠くに連なる山脈は、未だに雪で白い。あたし達二人は、指定のドレスにショールを使っているので、決して震えるほど寒いわけでも無かった。
「お嬢様。ここは寒いですから、暖炉の側でお待ちください。馬車が見えたら俺がお知らせしますよ」
あたしの後ろで苦笑いを浮かべていた、兵隊さんが言った。その兵隊さんは、もこもこに着ぶくれている。上着は獣の毛皮で作られている。見張り当番専用の防寒着である。少し重かったけれど、防寒着としては上等な物だった。
良くこの尖塔の見張り台に遊びに来るときには、見張りの兵隊さんからこの毛皮の上着を借りていた。悪いなーと思いながら、ついつい借りてしまうあたしがいる。ここは息抜きにはもってこいな場所なのである。
ここに居るのは、平民での兵士しか居ないので気楽にくつろぐことが出来る。ちなみに父ちゃんも、偶にはここに居ることがある。気軽に話が出来る場所なのだ。
そういった意味で、この尖塔の見張り台はお気に入りなのだ。うっかりこの間、この尖塔からの景色の話を為たことを、マリアが覚えていたのである。
マリアが少しでも早く御父様の馬車を見付けたいと言い出したのである。だから、この屋敷で最も高い尖塔に登る事になた。
読んでくれておりがとう。




