デイモンという男 2
「きちんと整備するように言わねばな。アリスは何を遣っているのだ」
デイモンは独り言ちた。今なら気にすることも無く、思考を言葉にすることが出来る。貴族としては相応しくない独り言の悪い癖だ。この癖も伯爵夫人の嫌う理由の一つになっている。もっとも、いったん嫌いになれば全てが嫌になる物なのだろう。
王都の道は小道までも石畳で整えられている。その事を一地方行政機関に、この広大な道の整備をさせるのは酷という物である。しかも、王都に向かう道の整備を、国王が認めたりはしないだろう。其れで無くとも、王都に居たる道を整備することは軍団の移動を容易にする。王族にとっては容認できないことだろう。
領都ディロウがあるマルーン地方は、隣国との国境に面した平坦な土地で、いわゆる柔らかな急所であり。もしもデニム伯爵の守る領都が陥落することがあれば、たちどころに王都への道が開かれることになる。デニム家は軍事的に重要な場所なのだ。
デイモン・デニム伯爵は、十五年前にアリス・ド・デニム伯爵令嬢と結婚した。実家の跡取りとなることの出来ない三男である。生活するためには、どこかの家の入り婿となるか、生活の糧をえるために働かなければならない。だけれども、彼は働きたくは無かった。
デイモン・デニムの性格を、彼の親たちも理解していたのか、早々と婿入りの話を持ってきた。顔だけは良く、貴族女性の扱いに長けていた彼は、まだ子供だった伯爵令嬢を主意のままにすることが出来た。
男に生まれたなら、この国の重鎮となっていたであろうと噂されていた、優秀な娘は自分の可能性と引き替えに。双子を身ごもることになった。計算の合わない妊娠は、令嬢としての醜聞となる。デイモンの人となりを吟味すること無く、半ば強制的な結婚。後のデニム家に起こる、数々の凶事の始まりとなった。
此れまで、彼と関わって幸せになった者は居ない。維持的に幸福感を得ることが出来たとしても、最終的には後悔することになるのだから。下品な言葉で表現するなら下げ××である。
少し忙しく。投稿できませんでした。




