大人達のお茶会 6
アリス・ド・デニム伯爵夫人と、ディモン・デニム伯爵との夫婦仲は最悪である。先代が決めた政略の結婚は、エディが見る限り失敗だった。デやむを得ず婿にとったのだけれども、やむを得ず婿にとったのだけれど。結婚したのは良かったのだが、蓋を開けたら酷かったのである。
顔は良かったのだが、政には全く興味を持たないばかりか、女好きの遊び人でしか無かったのである。籍を入れるまでの凜々しい様子は、どこへ行ってしまったのかと言いたい有様だった。このままだと、デニム伯爵家は妾の子に乗っ取られてしまう。領民に対して、全く情を持っていない庶子が貴族に成り上がってしまう。
だから、奥様はディモンの妾を側室として認めていないのである。熟々先代の人を見る目のなさにはあきれてしまう。あの方達は戦上手な領主で、この領地を王から任せられるに至ったのだけれど。娘の婿の資質を見定めることが出来なかった。一人娘の幸せを願っていたはずなのに、取り返しの出来ない失敗を為てしまったのである。
嬉しそうにリコの優秀さを褒めまくっている、伯爵夫人の整った顔を眺めながら考えていた。彼女は失ってしまったと思っていた娘が、自分の側に来てくれたのである。しかも、マリアと違って、頼りがいのある優秀な娘だったのだから、嬉しくて仕方が無いのだろう。このまま、リコを取り戻すことが出来ると良いと、エディは心の底から思わずに居られない。
彼女を支える者は多かったけれど、その本当はか弱い心を支えるには至らなかった。誘拐犯から、マリアを救い出してくれた者の中に、双子の姉が居たのは僥倖だった。
それだけではない。リコは庶民として育ったにも関わらず、貴族としての最低限の知識を持っているばかりか。画期的な着想を持っているのである。
特にハーケンの弓のできは驚く程良かった。戦の道具の工夫だけではない。洪水のさいの工夫も目を見張る物があった。
リコの思いつきは、今後も使われる工夫だろう。それだけでも、彼女の価値はかなり高い。
読んでくれてありがとうございます。




