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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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大人達のお茶会 2

 アリス・ド・デニム伯爵夫人は、此れまで読んでいた紙から目を上げた。ジェシカ・ハウスマンが素早く扉に向かうと、扉を碾き開ける。その動きはきびきびしていて気持ちが良い。そして、迎える相手が危険な人物だった場合のために、直ぐにも対応できる動きを見せる。見慣れた動きであったので、普段は気にもならないのだけれど。マリアが誘拐されたときに側に居てくれていれば、あんな怖い思いをさせずに済んだのにと思う。

 ただ、あの事件が起きなければ、ナーラダのリコと出会えることはなかっただろう。双子の娘の片割れ、カーラを発見することもなく。失われてしまったままだったろう。

 きっとあの子は村娘として、ハーケンの元で暮らし続ける。どちらが幸せなのか解らないけれど、アリス・ド・デニム伯爵夫人は自分の娘を手元に置いておきたかった。

「おはようございます。奥様、ご機嫌麗しゅう」

と、エディ先生が軽く頭を下げて言った。そして、和やかな表情を浮かべている。

 ジェシカ・ハウスマンが、綺麗なコーツイを簡単にすると後ろに下がる。実にメイドらしい模範的な動きに、アリスは笑ってしまう。ドリーがいなければ彼女が侍女の役職と成るのだけれど。ジェシカの代わりに成る人間を知らない。ドリーではジェシカのような護衛的なことは出来なかった。

 アリスは優雅に立ち上がり、エディ先生を迎え入れる仕草をする。なんと言っても、彼女が子供の頃教えを受けた教師なのであり。其れがたとえ子供のために雇い入れた、家庭教師とは言え。未だに尊敬してやまない人物なのだ。他に貴族の目があれば異なる態度をとらざる逐えないけれど。この部屋には気心の知れた人間しかいない。子供っぽい笑顔が、アリスの顔に浮かんでいた。

「おはようございます、エディ先生。何時もマリアとカーラがお世話になっております」

 アリスはコーツイを為ながら言った。エディ先生は、彼女が信頼する人間の一人には違いなかったのである。


 

 



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